浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ルドルフ・ケンペ指揮による維納の情事音楽

2008年06月07日 | 指揮者
維納の宮廷内の情事を扱ったオペレッタは多いが、ブラームスの親友、ホイベルガーの「オペラ舞踏会」は最も淫乱なストーリーだと思ふ。簡単に言へば4カップルによる乱交或いはスワッピングのお話である。

有名な「こうもり」とよく似た場面設定だが、ストーリーはもっと複雑なやうで、一度読んだだけでは理解できない。といふよりも人名と人間関係が覚えられないので、誰が誰の夫で、誰の妻かあやしい記憶のままでゐると、「やってええこと」と「かまへんこと」の区別がつかなくなるのである。

このやうな内容のオペレッタの序曲なものだから冒頭からお茶目な滑り出しだ。セロの甘いメロディラインもなんとなく妖艶な曲想である。しかし、維納のワルツに乗って奏でられるメロディはやはり上品で、ラテン系のストレートな表現とは少々異なる雰囲気だ。

本場維納フィルハーモニーの指揮を執ってゐるのはルドルフ・ケンペである。ケンペの演奏で最も印象に残ってゐるのは、ミュンヘン・オリンピックで起こった痛ましいテロ事件の追悼式で演奏された「エロイカ」の葬送行進曲だ。全世界に中継されたミュンヘンフィルハーモニーの映像は、今も目に焼きついてゐる。

その真面目で飾り気のない演奏スタイルは、この作品のイメージとはかけ離れてゐて面白い。ケンペにもこのやうな遊び心溢れる演奏があるのだなぁ、と思ひながら聴いてゐる。生真面目で面白みの無い「ラデッキー行進曲」とは異なり、ホイベルガーの作品の艶かしい雰囲気が楽しめる演奏だと思ふ。

盤は、英國TestamentによるリマスタリングCD SBT1275。


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