浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

イーヴ・ナットの「維納の謝肉祭」

2009年02月09日 | 洋琴弾き
当初、シューマンはこの作品を奏鳴曲として作ってゐたといふ不思議な記述を見たことがある。この曲のどこら辺が奏鳴曲なのか、僕にはさっぱりと理解できないのだ。次々と展開し、テーマも曲の展開も気まぐれな場面転換の連続であり、天才の閃きには理屈は要らない。凡人はただそれらを愉しめばよいのだ。

独逸人らしい演奏をする仏蘭西の洋琴家、イーヴ・ナットの演奏で「維納の謝肉祭の道化」作品26を聴いてゐる。この曲を聴いたのは友人YがミケランジェリのLPレコヲドで聞かせてくれたのが最初だったやうな気がする。シューマンの洋琴作品は描写的といふか絵画的といふか、見たり感じたりしたそのままをメロディーで表現するストレートさがいい。

ナットの洋琴はちょうどそういった感覚で、結構アバウトな表現も平気な様子で、音楽全体を大きく捉えるタイプの人のやうだ。音が一つぐらいとんでも気にもしない。それはベートーヴェンの奏鳴曲集でも同じ感覚だった。少々荒っぽいところも感じるが冷たさは感じない。雑多なものが交じり合ったカーニバルの雰囲気にはうってつけのスタイルではないか。カーニバルをあんまり緻密にやられたら息が苦しくなりそうだ。どさくそにまみれて仏蘭西国歌が登場しても、全く気づかないふりをするナットが好きだ。

盤は、独逸EMIによるリマスタリングCD CZS7 67141 2。


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