浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アンドレ・セゴヴィア バッハのシャコンヌ

2006年10月09日 | 器楽奏者
松田晃演氏のお宅にお邪魔したときのことは以前にもご紹介したが、セゴヴィアについて熱く語っておられたことは今でも忘れられない。ギターに特別興味があってお邪魔したわけではなかったが、蓄音機から流れ出るこの世のものとは思えぬ美しい音色を聴かせていただいて、セゴヴィアや松田氏が追求している美の世界は少し分かったやうな気がした。

僕が、実際にセゴヴィアのCDを購入したのはそれから数年経った震災後のことだ。4枚のCDをまとめて購入したが、その中でバッハのシャコンヌをはじめとした数曲の小品の演奏には、今までに味わったことのない新しい音楽の楽しみを見つけた。

ジャンジャン、ビンビンと響くギターの撥音楽器としてのイメージはたちどころに消えてしまった。まろやかで刺激的でないその音色と穏やかな強弱のつけ方も素晴らしいのだが、豊かに響くギターといふ楽器にまず惚れ込んでしまったのである。

秋の夜長、深夜に独りで聴くには静かな音量でセゴヴィアのギター、それもバッハがちょうどいい。久しぶりに聴いて、松田晃演氏のことを思い出してゐる。提琴用のシャコンヌをはじめ、無伴奏チェロ組曲などのトランスクリプションが多い中、子供の頃にソナチネアルバムか何かで弾いた有名なサラバンドとブーレはリュート用のオリジナル作品だったことを知った。セゴヴィアの手にかかれば、この有名な小品も神聖な曲に一変する。

このCDには1932年から1947年までの録音が8曲収められている。合計36分といふ少々寂しい内容で復刻もうまくない。しかし、僕にセゴヴィアの偉大さを教えてくれた想い出の盤である。

盤は、伊太利亜CEDERのSP復刻CD THEOREMA TH121185。


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