大阪府高槻市の淀川堤防で昨年4月、宇野津由子さん=当時(36)=の遺体が見つかった事件で、殺人罪で起訴された佐々木一幸被告(43)が、津由子さんの養母の宇野ひとみ容疑者(36)から「『睡眠薬飲ませたらええ』と言われ、ハルシオン(睡眠導入剤)を渡された。300万円で殺害を引き受けた」と供述していることが14日、捜査関係者への取材で分かった。
大阪地検は同日、津由子さん殺害を指示したなどとして、殺人罪と、処分保留としていた死体遺棄罪でひとみ容疑者を起訴した。
地検や捜査関係者によると、ひとみ被告は起訴内容を否認し、これまで供述調書の作成にも応じていないという。しかし地検は、ひとみ被告が事前にハルシオンを入手していることや、津由子さんの遺体からハルシオンの成分が検出されたことなどから、佐々木被告の供述の信憑性(しんぴょうせい)は高いと判断したもようだ。
起訴状によると、ひとみ被告は夫=昨年5月に自殺、当時(39)=や佐々木被告と共謀。昨年4月28日午後9時半ごろ、津由子さんの首を絞め、窒息死させたなどとしている。
府警捜査1課は、夫についても殺人容疑で被疑者死亡のまま書類送検した。
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宇野ひとみ被告の自殺した夫の養父、宇野昭二さん=当時(57)=を交通事故に見せかけ殺害しようとしたとして、大阪地検は14日、殺人未遂罪で、夫の知人で奈良県三郷町の無職、浦本高成(53)と大阪市港区の無職、羽生統保(51)の両容疑者を起訴した。
「死んだら保険金入る」 実行役が詳細に経緯供述
津由子さん殺害の詳しい経緯が、佐々木被告の供述や府警捜査1課の調べで明らかになった。同課はひとみ被告夫婦が、殺害して生命保険金を得るために津由子さんに近づいた可能性が高いとみている。
「津由子が死んだら保険金が入ってくる。よかったらやってみいひんか」
昨年2月、佐々木被告はひとみ被告の夫から、津由子さんとの養子縁組の証人になるよう促されて書類にサインした。この際、夫から「ひとみも知っているし、言い出しっぺはひとみや」とも言われ、初めて津由子さん殺害を持ちかけられた。津由子さんについては「古い友人」と聞かされていた。
3月中旬にも夫から「ひとみと津由子が仲が悪くてうっとうしいんや。殺してくれへんか」と頼まれ、ひとみ被告からも「この前の(夫の)話、考えてくれへん?」と催促されたという。佐々木被告は断ったが、犯行の数日前には夫から200万円の報酬を提示された。
佐々木被告は「自分への依頼をあきらめさせよう」として100万円を上乗せして300万円を要求。夫はその場にいたひとみ被告に、津由子さんの保険金の額を確認したうえで了承した。その後、佐々木被告に「ここまで聞いたら断れないぞ」と迫ったという。
殺害方法について、夫は「頭どついて首絞めたらええんや」と指示。ひとみ被告は「睡眠薬飲ませたらええ」と言い、睡眠導入剤「ハルシオン」の錠剤を渡し、飲み物に混ぜて飲ませるように助言したという。
錠剤は、別の交通保険金詐欺事件にかかわった仲間の女(45)=詐欺罪で有罪判決=が4月下旬、ひとみ被告に郵送したものとみられる。女は捜査1課に対し、「ひとみ被告から電話で頼まれて送った」と証言している。
佐々木被告は指示通り殺害を実行したが、殺人事件として捜査されたため保険金がおりず、報酬は得られなかった。
(2011年6月15日 07:07)産経関西