(43)合浦公園の歌碑(青森市合浦) 昭和31年5月建立(『一握の砂』より)
啄木
船に酔ひてやさしく奈れる
いもうとの眼見ゆ
津軽の海を思へば
明治40年5月5日、啄木は母、妻を残し、妹光子を伴い船で青森から函館に渡りました。この歌は、その時の様子を詠んでいます。函館は、平成28年3月に青森と函館を結ぶ北海道新幹線が開業し、大分近く感じます。東北新幹線は東京・盛岡間で運行していましたが、平成14年12月に八戸市まで、平成22年12月に青森市に乗り入れています。
啄木日誌
明治40年5月5日 五時前目をさましぬ。船はすでに青森をあとにして湾口に進みつつあり。海峡に進み入れば、波立ち騒ぎて船客多く酔ひつ。光子もいたく青ざめて幾度となく嘔吐を催しぬ。初めて遠き旅に出でしなれば、その心、母をや慕ふらむと、予はいといとしきを覚えつ。清心丹を飲ませなどす。山は動かざれども、海は常に動けり。動かざるは眠の如く、死の如し。しかも海は動けり、常に動けり。これ不断の覚醒なり。不朽の自由なり。