温故知新~温新知故?

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シリア 戦場からの声 単行本 〜桜木 武史 (著)〜読了〜大ざっぱな死者数が並ぶだけである。一人一人の生きた証は切り捨てられている。〜

2017-11-20 18:04:20 | 

シリア 戦場からの声 | 桜木 武史 |本 | 通販 | Amazon
つ星のうち4.0シリアの人びとの息遣いだけでなく、著者のジャーナリストとしての在り方も印象的です
投稿者大寺萌音2016年3月11日
形式: 単行本
本書は、フリージャーナリストである著者が、5度にわたってシリアに渡り、そこでの取材や体験をベースに書いたものである。
本書の魅力は、何よりもテレビなどのニュース報道などでは知り得ない、シリアの人びとの声というか息遣いが伝わってくることだろう。戦乱の中でひたすら生活を続ける人々。宗派は違うものの、多くの人びとがイスラム教徒としてモスクへ通い、祈りとともに、政治的な声を上げる。現政権に批判的でありながらも、とにかく平和な日々を願う人々。様々な形で著者に協力しかかわる人々。本書に登場する人々は、そこで生きていることが実感できる。

先日、下に示したようにクレージージャーニーというTV番組を見て桜木武史さんという人に感動した。その後、その感動が続いて、図書館で上記の本を借りてしまったのだが、昨日読了した。
クレイジージャーニー「戦争ジャーナリスト桜木武史」を見た〜桜木武史さんってすごい〜 - 温故知新~温新知故?
この戦争ジャーナリストの桜木武史さんという人、とても見かけは戦争ジャーナリストには見えない。鉄砲などの武器は持たないというので、同行した反政府軍の仲間から、寝ているうちにたくさんの銃を周りに置かれるなどからかわれたとのエピソードを紹介している。

本もすごく面白かった。まあ、面白いというと語弊があるかもしれないが、通常にニュースでは得られないシリアの状況、戦争の現実が本当にすごくよく分かる。シリアに行ってみたい衝動にかられるほどだ。
ISやダーイッシュ、自由シリア軍、政府軍、クルド人、PYD、YPG、PKK、クルディスタンなどニュースなどで、いかにも自分は知っているという顔でコメントするTVおなじみのいわゆる専門家とは違った生の情報が読める。TVにでてくるおなじみのコメンテーターは結局は日本にいてネットなどで調べた情報をしゃべるか、あるいは現地に行って政府軍側から戦場の状況を報告するだけ。それも「犠牲者が何百人でた、悲惨です、私は憤りを感じます」みたいないかにも正義のジャーナリストという感じで、報告するが、それがいかに虚しいかが分かる。みなこの桜木氏のように反政府軍の兵士と一緒に銃も持たずに戦闘に同行せよとは言わないけど、このようなひとが報告する内容と比べると、ネット検索や安全が確保された中での取材は虚しいかが分かる。しかも、桜木さんは「死」でなく「生」に重きをおいて報告してくれる。これは非常に貴重。またイスラム圏、アラブ圏の複雑な宗教に基づいた戦いは講義のような形で色々聞いても何も頭に入らないが、実際その人達に会って、日々同じ生活をしながら、この宗教と、この宗教は、こんな経緯があって、今日のこの戦闘だというような簡単な解説こそ頭に入ってくる。
また、桜木さんは、2人の日本人がISに誘拐されて殺されてからも、シリアに行っている。これを当時のメディアもそうだったけど、簡単に向こう見ずな行動とはいえないという気持ちにもなった。
イスラム圏の紛争に少しでも興味のある方は、ぜひこの本を読んでいただいたほうがいいと思う。私も、シリアについてほんの少しだけ親近感が生まれ、今後のニュースに対する感度が高まったと思う。それにしても、いろいろ複雑ですね。こういうコメントするのがいけないのだけど。。。。この本は難しくない。あ、そうそう、桜木さんの文章は、うまい、そのせいか大変読みやすい。これもこの本の大きな良い点だ。
彼の言葉。151-152ページ。
「死が間近に存在すれば、生は強い輝きを放つ。その光に私は吸い寄せられた。人間として生きた証を残したい、そして誰かに見てほしいと思うのは当然のことかもしれない。しかし、大きな事件でも起きない限り日本のメディアが取り上げる紛争地の記事には大ざっぱな死者数が並ぶだけである。一人一人の生きた証は切り捨てられている。私はそれに疑問を感じた。」
【大竹まこと×桜木武史】 トラックドライバーしながらシリア内戦を取材