梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

抽き出しが増えました

2009年05月15日 | 芝居
先輩のご縁をもちまして、吉原最古参の芸者、“みな子”姐さんの芸をお座敷で拝見できるという、願ってもない機会に恵まれました。
浅草寺裏の割烹店の2階を貸し切っての一夜の宴は最初から大盛り上がり! 御年90というみな子姐さんの弾き唄いの「鶴亀」は、ツレの姐さんが鼓と大皷とを一人で同時に演奏するという初めて拝見する技。その鼓と大皷を、続く「吉原さわぎ」の唄の間に、あれよあれよという暇に、胴と革とにばらして片付けてしまうのですから…!

それから、洒落た小唄を2、3番続けて披露のあとは、私たちも参加しての<拳遊び>。和藤内と婆と虎の“虎拳”は存じておりましたが、太鼓を挟んで相対し、ジャンケンで負けた方がその場でクルリと回り、勝った方は太鼓を打ち鳴らす、というのを、どちらかが3連勝するまで続けるのや、ちょいとここでは説明できない艶っぽいものまで、初体験の客ばかりでしたから、マァ爆笑やら嬌声やら…。(私もすっかり楽しんでしまいました)

最後は、前のお座敷を終えたばかりの幇間さんが駆けつけて下さり、これまた洒落の効いた踊りや屏風芸を続けてご披露下さいました。生で観る<吉原の芸>の素晴らしさ! この目に焼き付けることができたのが、本当に有難いです。
みな子姐さんの何気ないしぐさ、三味線の調子を合わせるかたちとか、お酌をする姿。廓の雰囲気が自ずと滲んでいらっしゃる。勉強になりました!

初めてこういう場に足を踏み入れた私ですが、とっても居心地が良かった、と申せばなんとも僭越ですけれども、この空気、この賑わい、心底嬉しく思える至福のひと時となりましたのは、なにもお酒の所為だけではないハズと確信しております…。