梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

竹林のなかで

2007年03月21日 | 芝居
2日間のご無沙汰でした。終演後、仲間との外食が続き、ついつい遅くまで話し込んでしまいました。楽しく喋れる友人がいるのは有難いですが、ご覧頂く皆様とのご縁が疎かになってはいけませんね。反省反省。

さて今日は久しぶりの「千本桜」話ということで、成駒屋(扇雀)さんが小金吾を勤めていらっしゃる「小金吾討死」の場についてお話しいたします。
平維盛の妻子、若葉内侍と六代君を守る忠臣、主馬小金吾が、鎌倉方の討手に囲まれ、奮迅の戦いを見せるも、ついに力つきるまでを描くこの場は、黒幕、竹薮というごくごくシンプル、かつ淋しい装置のなかで、カラミの<黒四天>とともに立廻りを見せるのが主眼で、歌舞伎の立廻りの中でも大掛かりなものの一つとなっております。
この場の装置がこれまでのものとは少々趣きを変えておりまして、それまでは歌舞伎大道具の定式にのっとり、平面的に竹、薮笹を配置していたのですが、8本ほどの竹を舞台中央付近に立体的に配置し、あわせて薮の居所も変えて実際の竹林のようにし、黒四天が竹のあいだを縫うようにして現れたり動いたり、立廻り自体にも竹を使うようにしたりと、大変凝った演出になっております。
この原型は前回の歌舞伎座での通し上演(平成15年2月)の折りに考案され、今回はそれにさらに手を加えてのものになっております。前回の上演時には、私も黒四天で出演させて頂いておりましたので、印象深く覚えておりますが、その時は立廻りのなかで、小金吾によって次々と竹が斬られ、バサバサと倒れるという手順がついておりました。今回は2本ほどでしょうか。
その昔、名立師坂東八重之助氏が考案なさった、蜘蛛の巣状になる<捕り縄>の手順も、竹の中を黒四天たちがくぐり抜けながら作るため、これまでとは手順が変わっておりますが、ひと工夫もふた工夫もされた、大変な労作(おこがましい言いようかもしれませんが、前回、今回と担当された立師の方のご苦労のほどは、出ていない私でもひしと察せられました)かと思います。

地味な舞台面に映えるよう<長十手>を使ったり、他の立廻りではあまり見られない技があったりと、見どころ満載、チームワークで見せる迫力ある立廻りをどうぞ御堪能頂きたく存じます。

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