鎌倉から逃げてゆくお軽勘平の行く手をさえぎる者こそ、鷺坂伴内。
いったいどういうつもりでそんな格好してきたの? とツッコミをいれたくなるようなお間抜けファッション。浅葱と赤の段鹿の子の湯文字姿に、玉子色のしごきを帯がわり。紫の襷も赤の鉢巻も長くダラリと垂らした拵えは、とても戦いに来たとは思えません。
10人も家来を連れてきたのはいいけれど、結局みんな勘平さんにやられちゃう情けなさ。でもどこか憎めない、愛嬌満点の<道化敵(どうけがたき)>ですが、言うこともなかなか人を食っています。
三味線の節に合わせての<ノリ台詞>で、お軽を渡せ、さもなくばえらいめにあわせてやるぞと脅すわけですが、この部分が今月は<鳥尽くし>になっています。
「さあこれからはウズラ ヅル(うぬが番) おカモ(軽)をこっちへ ハト サギ ヨシキリ(渡さばよし) いやだなんぞとクジャク(ぬかす)が最後 とっつかめえて ひっつかめえて やりゃぁしょねえが返答は サ、サ、サササササ… 勘平返事は タンチョウタンチョウ(なんとなんと)」
このやり方は昔からあるもので、演者によっては使われる鳥の名前が変わりますし、<鳥尽くし>ではなくて「(略)…とっつかめえて ひっつかめえて 千六本に切り刻み 粟麩すだれ麩 椎茸なら 干瓢返事は なんとなんと」という 乾物ばかりのもの、また私は実際に拝見したことはございませんが、「お軽をこっちへホウレン草」というように、野菜ばかりの<青物尽くし>、一座の俳優の名前を折り込んだ<役者尽くし>もあるそうで、伴内役者の遊び心で色々な趣向が楽しまれてきたようですね。『嫗山姥』太田十郎も煙草の銘柄を並べた<煙草尽くし>をいうこともありますし、『吉野山』の早見藤太が<役者尽くし>をしたのも拝見したことがあります。来月上演の『千本桜・渡海屋』の相模五郎の<魚尽くし>も有名ですから、こうした<◯◯尽くし>は、端敵(はがたき)や道化敵の常套手段ともいえるかもしれませんね。
幕切れ、勘平にこてんぱんにやっつけられても、なおもしつこくお軽を追いかけようとする伴内を遮るように、定式幕が<下手から>閉まってまいります。それにあおられてヨタヨタしたあげく、最後は伴内が自分で幕を閉めるというのが定番ですが、この演出のために、幕開きも<上手から>幕を引くことになっています。こういう開閉の仕方を<逆幕(さかまく)>と申しております。
ちなみに、伴内の<鳥尽くし>を受けての勘平の台詞「…おのれ一羽で喰い足らねど 勘平が腕の細ねぶか 料理塩梅食ろうてみよ エェ」での<ねぶか>は長ネギのことでして、「ネギみたいに細い腕だけど、腕前はスゴいんだから覚悟しろよ」ということになります。なんともまあ悠長な敵味方の会話でした。
いったいどういうつもりでそんな格好してきたの? とツッコミをいれたくなるようなお間抜けファッション。浅葱と赤の段鹿の子の湯文字姿に、玉子色のしごきを帯がわり。紫の襷も赤の鉢巻も長くダラリと垂らした拵えは、とても戦いに来たとは思えません。
10人も家来を連れてきたのはいいけれど、結局みんな勘平さんにやられちゃう情けなさ。でもどこか憎めない、愛嬌満点の<道化敵(どうけがたき)>ですが、言うこともなかなか人を食っています。
三味線の節に合わせての<ノリ台詞>で、お軽を渡せ、さもなくばえらいめにあわせてやるぞと脅すわけですが、この部分が今月は<鳥尽くし>になっています。
「さあこれからはウズラ ヅル(うぬが番) おカモ(軽)をこっちへ ハト サギ ヨシキリ(渡さばよし) いやだなんぞとクジャク(ぬかす)が最後 とっつかめえて ひっつかめえて やりゃぁしょねえが返答は サ、サ、サササササ… 勘平返事は タンチョウタンチョウ(なんとなんと)」
このやり方は昔からあるもので、演者によっては使われる鳥の名前が変わりますし、<鳥尽くし>ではなくて「(略)…とっつかめえて ひっつかめえて 千六本に切り刻み 粟麩すだれ麩 椎茸なら 干瓢返事は なんとなんと」という 乾物ばかりのもの、また私は実際に拝見したことはございませんが、「お軽をこっちへホウレン草」というように、野菜ばかりの<青物尽くし>、一座の俳優の名前を折り込んだ<役者尽くし>もあるそうで、伴内役者の遊び心で色々な趣向が楽しまれてきたようですね。『嫗山姥』太田十郎も煙草の銘柄を並べた<煙草尽くし>をいうこともありますし、『吉野山』の早見藤太が<役者尽くし>をしたのも拝見したことがあります。来月上演の『千本桜・渡海屋』の相模五郎の<魚尽くし>も有名ですから、こうした<◯◯尽くし>は、端敵(はがたき)や道化敵の常套手段ともいえるかもしれませんね。
幕切れ、勘平にこてんぱんにやっつけられても、なおもしつこくお軽を追いかけようとする伴内を遮るように、定式幕が<下手から>閉まってまいります。それにあおられてヨタヨタしたあげく、最後は伴内が自分で幕を閉めるというのが定番ですが、この演出のために、幕開きも<上手から>幕を引くことになっています。こういう開閉の仕方を<逆幕(さかまく)>と申しております。
ちなみに、伴内の<鳥尽くし>を受けての勘平の台詞「…おのれ一羽で喰い足らねど 勘平が腕の細ねぶか 料理塩梅食ろうてみよ エェ」での<ねぶか>は長ネギのことでして、「ネギみたいに細い腕だけど、腕前はスゴいんだから覚悟しろよ」ということになります。なんともまあ悠長な敵味方の会話でした。
ふのり一把で喰いたらねど、って地口行灯があって、元はなんだろう?って思ってたので、すごくすっきりしました。ありがとうございました。^^
おっしゃる通り、刀の刃を下に持っての動きは、役名にちなむ鷺の<見立て>です。刀がクチバシになるわけですね。
この振りは勘平に殺されそうになった伴内が、お軽のとりなしで一命助かり、這々の体で引っ込むときに見られます。
urasimaru様、元ネタが判明してよかったですね。<地口行灯>につきましては、後日ご紹介させて頂きますね。