梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

座り方

2010年02月22日 | 芝居
立役の諸役の、舞台上での“控え方”には、<立ち身><正座><蹲踞(そんきょ)><片ひざ><あぐら>などいろいろございますが、『俊寛』の供侍は<片ひざ>です。文字通り、つま先と、左右どちらかの膝を地面につけて体をささえます。
どちらの膝を地につけるかには、いちおうのルールがございます。
「目上の人に近い方の膝を地につける」のです。

自分から見て、右側にエラい人(主君ですとか上使ですとか)がいれば右膝を、左側にいたら左膝というわけです。
この決まりごとにのっとることで、居並ぶ人たちの形がバラバラになることもなく、見た目も綺麗になるのですね。
ただ、この姿勢は長時間続くとかなり足に負担がかかります。そういうときは、芝居進行の途中で逆足に組み替えることをいたしますが、これもキッカケを決めて全員一緒に行うのが約束。“絵面”を大事にするのは歌舞伎の原則ですね。
…やはり『俊寛』で、船から地面へ桟橋を渡す船頭が2人おりまして、丹左衛門や瀬尾たちの、何度かある船の乗り降りのさいには桟橋の両脇に片ひざで控えます。そのときも、船から降りるときと船へ乗るときとで足の組み方は変えているのですよ。


同じようなルールは、<あぐら>にもあります。桟橋係以外の船頭は、船の下手側にあぐらで控えておりますね。
基本的に「目上の人に近い方の足が前になるように組む」のです。

いちおうの約束とはなっておりますが、じゃあ自分の正面にエラい人がいたらどうするの? ということもあるわけで、時と場合によって変わることもございますが、いずれにしましても、皆が“揃える”ことで、舞台面の印象を整えることに変わりはございません。

…女方はほとんど<正座>ですね。立役に籍を置いていた頃は、蹲踞や片ひざが大の苦手、あぐらもお尻から下が全部痺れていた私ですが、その頃にくらべれば、今はずいぶんラクかもしれません(痛いときもあるけれど)…。


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