梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

月末の催し

2008年03月21日 | 芝居
今月末の28日に国立劇場小劇場で開催される、舞踊家坂東三津緒師の会<三津緒の会>におきまして、師匠梅玉が『珠取海士』の<房前の大臣>役でご出演なさいます。
本日は国立劇所の大稽古場での<下ざらい>で、私も後見をさせて頂きますので、師匠とともにお稽古に伺いました。

『珠取海士』は歌舞伎興行ではまずお目にかからない演目です。
舞台は讃岐の国志度の浦。藤原淡海の息子、房前の大臣がこの地を訪れるところから始まります。
房前は早くに亡くした母のことを何も知りません。ようやく、讃岐の国志度の浦に住む女だったことを知り、昔を知るよすがを求めてやってきたのです。
水面に映る月影も美しい志度の浦辺で出会った一人の海士(女)との語らいの中から、房前の大臣はかつてこの地でおこった世にも珍しい出来事を知ります。…唐から我が朝へ贈られた宝珠が、ここ讃岐の国志度の浦で竜宮の眷属に奪われたため、藤原淡海公がこの地へ下り、身をやつして玉の在り処を求めるうち、土地の海士と馴れ親しみ一子をもうけた。淡海は、もし宝珠を取り戻すことができたらお前の産んだ子供を我が一族の世継ぎにしてやろうと約束。子の行く末の栄華を願い、母は命をかけて竜宮へ…。

竜宮から珠を取り戻すための、海士の壮絶な行動の有様、そして房前の大臣に物語る海女の正体とは…。

『珠取海士』は地唄のものが有名ですが、今回上演なさいますのは、六世藤間勘祖師の振付による義太夫地のもので、大変ドラマチックな曲調です。能の『海士』を下敷きにしておりますから、重厚さ、格調があるのはもちろんのこと、母(の霊)と息子の再会と別れのくだりは情愛たっぷり。<物語>性に富んだ一幕の舞踊劇でございます。大旦那、六世歌右衛門も舞踊会等でこの海士役をお勤めになられたそうでございます。

私の勤めます後見は仕事は多くないのですが、作品の雰囲気が重いものですから、きっちり綺麗にできたらと思います。舞台にいる時間は長いので(といっても師匠の真後ろに、ですが)、この機会に『珠取海士』という作品にどっぷり浸かり、よく勉強したいです。

この度の<三津緒の会>は、この『珠取海士』と、それに先立つ荻江節『鐘の岬』の2本だてです。三津緒師は、『鐘の岬』清姫と『珠取海士』の海士の2役を演じられます。

3月28日(金) 於・国立劇場小劇場 午後6時開演です。



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