梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’08 皆様のイキに合わせて  

2008年07月23日 | 芝居
新大阪から地下鉄御堂筋線、南海電鉄を乗り継いで岸和田へ。
【岸和田市立浪切ホール】での2回公演でした。

朝のうちに南海のなんば駅で<551の蓬莱>の豚まんをいっぱい買って楽屋入り。お昼にみんなで食べてアァ美味しい! 
こちらの劇場は、桟敷席や本花道もありまして、歌舞伎の公演にとっては大変使いやすい劇場でございます。木の温もりあふれる内装もとても親しみやすく、昼夜公演ともに一杯のお客様で、ますます盛り上がったのでした。

各地の<文化ホール>とか<市民会館>とかは、いわゆる“本花道”がなく、舞台下手の壁際にくっつくように、2、3メートルの<退場路>があるだけのことが多いのですが。こちらのように本舞台と垂直に交わり、客席を縦断する長さ3間ほどのれっきとした花道がございますと、各狂言ともに本来の演出で上演できますし、お客様との親近感、臨場感は段違いでして、その効果は大変なものがございます。

実は私、今月は『橋弁慶』『毛谷村』での“花道揚幕”開閉係を担当しておりまして、弁慶、牛若丸、微塵弾正、後室お幸、弥三松、直方源八、お園、斧右衛門と、数多くのお役の登退場シーンに携わっております。
本来大劇場でしたら、専属の“揚幕係”がいらっしゃいますが、地方巡業ともなりますと、少ない人数で様々な仕事を分担せねばなりませず、揚幕の開け閉めも、役者が勤めるのでございます。
それぞれのお役を勤める俳優さんのイキに合わせて幕を開閉するのは神経もつかいますし、日によって花道の長さが変わったりするので開けるキッカケも変わり、まさに“臨機応変”です。劇場の機構によっては、本来右から左へと開ける幕を、逆の方向に開けることもあり、その時は、私から各俳優さんへあらかじめ「今日は逆に開けます」と申し伝えなくてはなりません。そうでないと、出の瞬間に「アレ!?」と思わせてしまい、お役へ集中できなくなってしまいますからね。
巡業ならではのお仕事ですが、花道にいる時間が多い分、よりお芝居を拝見できるので、今回は本当に勉強になっております。

…夜中に「東北地方で強い地震」の速報が。この巡業でお邪魔した土地々々が震度5だったり4だったり。被害に遭われた皆様には、心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧をお祈りお申し上げます。

(7月24日 記)

最新の画像もっと見る