梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

暮古月稽古場便り4・楽屋舞台を駆けずり回り…の巻

2006年12月01日 | 芝居
本日『将門』『出刃打ちお玉』『嫗山姥』の<初日通り舞台稽古>。
5ヶ月ぶりのトンボを返りますので、身体がなまっていないか、勘がにぶっていないか心配でしたが、まず最初の『将門』での、<馬簾付き四天>を着てのトンボは無事返ることができ、大いに安心いたしました。この衣裳を着てトンボを返るのは実に5年ぶりで、その間体重も6、7キロ増えておりますから…。無様な姿は見せたくないですし、それよりなにより、今日の舞台で、ひと月無事に勤め上げられる状態のトンボを見せなければ、まわりの方々へご迷惑をかけてしまいます。そういう意味でも、とりあえずは安全に立ち回りを勤めることができたことで、精神的にもだいぶ楽になったのです。

最初の出番を終えてゆっくりする間もなく、続く師匠の出番『出刃打ちお玉』。昨日までに決めた段取りで動いてはみるものの、実際拵え変えには何分とれるのか? <拵え場>はどれくらいの広さをとれるか? 誰が何を持ち何をすれば一番よいのか? その場にならないとわからないことが盛りだくさんで、対応に大わらわでした。場数の多い舞台ですから、大道具さんには大道具さんの転換の段取りがあり、照明さんには照明さんの手順があり、小道具さんには小道具さんのなさり方があります。そして音羽屋(菊五郎)さんはじめ多くの役者さんとそのお弟子さんのそれぞれの用事もある。まわりの皆さんのお邪魔にならず、しかし滞りなく師匠の用事を勤めること。久しぶりのお芝居ということもあり、劇場全体でバタバタした全二幕でした。
肝心の<早ごしらえ>には、まだ若干の工夫が必要です。もう少し、それこそ30秒でも稼ぎたい! 稽古終了後も衣裳さんと改めての打ち合わせをおこない、また一門の中でも、役割分担を再確認いたしました。

バタバタはいたしましたが、大きな支障もなく『出刃打ち~』が済み、師匠をお見送りしましてからが、今月一番の大立廻りとなる『嫗山姥』。<花四天>メンバーが、それぞれ師匠の用事をしていたりする関係で、開幕前の居所合わせなどはできませんでしたが、出番前に、無人のロビーで一回手順を合わせ、すぐに舞台でぶっ続け…。これまで何度も稽古をしたおかげでしょうか、無論改善点はいくつも見つかりましたが、混乱渋滞停止もなく済みました。ひとえに先輩方のリードのおかげでございますが、あらためて、まわりに<合わせる>ことの大切さを感じました。計14人という大所帯が、ひとつのかたちを作り、まとまった流れで動いてゆく。そのために、ひとりひとりが何をすればよいのか、どう気を遣えばよいのか。今回のような大規模な立廻りに、そうそうは出ない私ですから、いたって未熟であることは百も承知で申し上げますが、本当に、先輩方の細やかな気の配り方、全体を見る目の確かさには頭が下がりました。少しでもその心遣いを盗めるように頑張ります。

本日全ての仕事が終わったのが午後9時。さあ12時間とちょっと後には、ふたたび楽屋でストレッチをしているはず。まずは初日を無事に開けられるよう、心と身体の調子を整え、元気に楽しく前向きに、そして真摯に、ふたつの立ち回りとひとつの後見、計5回の拵え替えを勤めたいと思います!

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1 コメント

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段取り (SwingingFujisan)
2006-12-01 23:57:14
お疲れ様です。梅之さんのレポを拝見すると、段取りをきちんとつけるということが、お稽古の中で非常に重要な位置を占めていることがよくわかります。そうですよね、多分、どんなお仕事でも、段取りというのがまず最初の一番大事な部分なんでしょうね。明日の初日、頑張ってくださいね。
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