梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

ウグイスさんの操作法

2007年10月04日 | 芝居
先日もご紹介しましたように、『うぐいす塚』では各場で<鶯>が登場します。
登場人物に密接に絡み、ストーリー展開にも大きく関わる存在でございまして、いわば<芝居する鳥>。手のひらに収まるような小さな作り物が、どのように動き回るか、是非ご注目頂きたいと存じます。

今回の芝居に限らず、歌舞伎で鳥を扱う場合は、得てして<差し金>を使うことが多いですね。黒塗りの竹の棒の先に作り物の鳥を取り付けたものは、皆様よくご存知かと思います。
『伽羅先代萩・御殿』の雀、『関の扉』の鷹、『鳶奴』の鳶(鰹を掴んだ面白い姿)など、種類も色々ございます。飛んでいる様を表現するには、棒の先を上下させて見せる他にも、羽の部分にとりつけた黒糸(幕内では“ジャリ糸”と申しておりますが)を手元で操作して、羽ばたきを見せる工夫もございます。

私も、過日の『苫舟の会』の「新書小町桜容彩」で鷹を遣わせて頂きましたが、平成13年1月国立劇場『奥州安達原』の「外が浜の場」で、鶴を遣ったのが印象に残っております。
猟師に身をやつした奥州安倍氏の忠臣善知鳥安方が、禁制の鶴を射殺す場面でしたが、仕掛けで矢が突き立つようになっていたこと、また鶴の足に、後の芝居で重要な役割を果たす金の札がついており、これを安方が外せるようになっていること、ちょいと<仕込み>の多い鳥でございました。
また、鶴の飛び方といえば、優雅に大空を<滑空>する感じですから、たんに上下させただけでは鶴らしさがでない。といってただ真っすぐに舞台を移動しては飛んでいるようにも見えません。加えて、安方の矢が刺さった瞬間の動きなど、どうやったらお客様から見て<らしく>見えるか。色々試行錯誤したものでした。

<差し金>をつかうという見せ方そのものが、だいぶ古風な演出ですから、あまりリアルになってはいけないのでしょうが、お芝居の雰囲気にあった動かし方は、演目ごとに様々と申せましょう。
ひるがえって今月の鶯さん。差し金もつかいますけれど、ひと味もふた味も違う見せ方。あるいは差し金をつかわないところも…?
国立の大舞台に、どのようにはばたくのでしょうか!?

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