梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

巡業日記23・横須賀の巻

2005年07月28日 | 芝居
本日は、横須賀市『よこすか芸術劇場』での二回公演でした。
私の実家からは横須賀線で一本。三十分ほどで到着です。横須賀駅にははじめて訪れましたが、駅を出るともう目の前には港がひらけておりまして、おりからの晴天のもと、とても気持ちよい眺めを楽しみながら劇場へと向かいました。
今日の会舘は非常に規模の大きな劇場で、客席は四階まで。内装も美しく、さながらオペラ劇場のような感じでした。東京三軒茶屋の、世田谷パブリックシアターにも似た印象を受けました。
その広い客席が、今日の公演では昼夜ともおおかた埋まっておりました。ほぼ毎年巡業公演がお邪魔しているためでしょうか、歌舞伎というものが、この街に浸透していることが感じられ、有り難くもまた、嬉しく舞台を勤めることができました。

楽屋と舞台の階が違ったのですが、エレベーターがございましたので、師匠の移動も簡単に済み、今日は「拵え場」は作りませんでした。
久しぶりの二回公演でございましたが、やはり二回は疲れ方が変わってまいります。「疲れるほど舞台に出てるのか」とお思いになるかもしれませんが、なにしろ同じ芝居を一日に二回繰り返す、というのは、違う芝居ニ本に出るのとはまた違った疲れなのでございます。国立劇場で六月、七月に行われる「鑑賞教室」も連日二回公演なのですが、普段歌舞伎座などでの昼夜別の狂言立てに馴れてしまいますと、一日同じテンションを保つこと、惰性に陥らないようにすること。気を付けねばならぬ点は多く、反省することもしきりです。よく現代劇やミュージカルなどで、○○ヶ月ロングラン、なんていうのを目にしますと、生意気な言い様かもしれませんが、皆さんよくやってるな~と、ただただ感服いたします。
とはいえ、役者は一日ニ回であろうと、観にいらっしゃるお客様は、その日その時その一瞬ががすべてなわけでございます。貴重なお時間をさいていらっしゃった方々に、こちらの都合でいい加減なものをお見せするわけにはまいりません。二回目の芝居には、一回目と同じ、いやそれ以上の気持ちを込めるくらいの心構えで取り組まなければ、私のような若輩者は勤まらないと戒めております。
油断、惰性、馴れ合い。舞台にとっての大敵は、私の心のすぐ内側にあるわけで、なおさら意識をもって勤めなければと存じます。

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