梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

勉強会稽古日誌 9頁

2006年08月22日 | 芝居
本日はA班の各演目の<初日通り舞台稽古>でした。
私はA班では出番はございませんので、まず正午からの『修禅寺物語』では、同じ頼家役の中村蝶之介さんのお手伝い。衣裳の着付をいたしましたり、花道からの登場まで付き添ったり。平成十二年五月に、この役を師匠が演じられました折りに携わっておりましたから、別段支障なくサポートができました。
もちろん舞台上でのA班の皆さんの演技もしっかり拝見。改めて正面から見ることで、(なるほど、ここはこうやらなくてはいけないな)(あそこを気をつけないといけないな)と、勉強になることばかりで、明日の自分の舞台稽古に是非活かしたいと思います。
…同期の蝶之介さんと同じ役ということで、ライバル心がおきないかと聞かれれば否定はできませんが、指導である紀伊国屋(田之助)さんのご意向が、それぞれ自分で考えた演技をしてよいということでございますし、それぞれの持ち味も違いますので、彼は彼の頼家を演じ、私は私の頼家を勤めるだけだと思います。もちろん、お互いに意見を言い合ったり気づいたことを教えたりもいたしますが、つづまるところは、紀伊国屋さんのお考えになる『修禅寺物語』のありように沿ったお芝居を勉強するのが、今回の勉強会での本分だと考えております。二人の動き方や台詞回しに、違うところもございますが、双方ともに紀伊国屋さんがご了承下さったやり方です(ここにダブルキャストで上演する意義もあるのかもしれません)、是非両班ともにご覧頂きたいと存じます。

『修禅寺物語』の稽古終了後は、用意し忘れていた化粧品を買いに、いったん銀座に出かけました。せっかくですので、他の出演者にも足りないものがないか聞いて回って、数人分の買い出しとなりました。舞台化粧品は、そうそうあちこちで売っているわけではございません。国立劇場はそういう意味で不便な場所ですね(なにせ周りは官公庁ですもの!)。

次なる仕事は午後五時半からの、『廓三番叟』『願絲縁苧環』『三社祭』の舞踊三段返し。今日は稽古に先立ちまして、<舞台転換稽古>がございました。なにしろ今回の上演の特色として、三演目を幕を閉めずに、全て<明転(あかてん。お客さまの目に見える形で場面転換をすること)>で繰り広げるので、役者はもとより、演奏家の皆様の登退場、あるいは装置の移動、大道具さんの動きの段取りを、振り付けでいらっしゃる藤間の御宗家のご指示のもと、舞台監督さんや狂言作者さんも加わって、しっかりと打ち合わせました。
私は、ここでは黒衣になりまして、『廓三番叟』から『願絲縁苧環』に転換する際の、出道具(舞台備え付けの小道具)の撤収と、昨日お話しした『三社祭』での雲の操作。出道具撤収は今日決まった任務ですが、雲の操作は予め決まっておりましたので、操作のキッカケや段取りはいちおう勉強はしておいたのですが、なにせ初めてやることです。梯子をのぼって舞台の天井近くまであがり、そこからロープで雲の昇降を操るわけですが、踊っている人の動き、清元の曲、鳴物に合わせて、ちょうどいいスピードで上げ下げするのが難しかったです。今日は手探りで終わってしまいました。本番ではきちんと勤めます!

午後八時過ぎに楽屋を退出。同じB班に出演する先輩と半蔵門で夕食をとりました。いよいよ目前の本番をひかえて、改めて勉強会運営の大変さ、かぎられた時間の中で役を学ぶことの難しさを語り合いました。
明日はとうとう私の頼家の番です。気負わず演じられるよう今から精神集中です!

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