梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

歌舞伎座初春稽古日誌・梅

2009年12月29日 | 芝居
『与話情浮名横櫛』以外のすべての演目の<初日通り舞台稽古>でした。

まず午前11時より『娘道成寺』。舞台の上手下手に居並ぶ所化のなかで、私は一番上手の端に座っております。
このポジションは、“鈴太鼓”のくだりから“鐘入り”に突入する白拍子花子を遮るように入れ替わる、そのトップバッターとなるのです。長唄と、中村屋(勘三郎)さんの動きを見計らって立ち上がり、動き出さねばなりません。これが大変ドキドキものでして…。入れ替わるのが早くても遅くてもいけませんし、それまで作り上げられてきたイキを壊してはどうにもなりません。
自分の居所から花子の立ち位置まで、どのくらいのスピードで進んでゆけばよいのかを、今日は探りながら勤めましたが、いや~、歌舞伎座は広い! 昨年の博多座でも、山城屋(坂田藤十郎)さんの花子で同じく勤めさせて頂いたのですが、唄のひと文句早めに動かないと間に合わないのです。道理で花子が遠くに見えたわけだ…。

同じことは『勧進帳』の富樫の後見でもいえまして、昨年の巡業は間口の狭い会館ばかりでしたから、簡単に移動ができて仕事ができた箇所が、ここ歌舞伎座ではとてもせわしなく思えるのです。本当に、舞台の<寸法>というものはおそろしいもので、体の中に“歌舞伎座基準”がないと、エラい目に遭うなァ、と…。
その『勧進帳』、後見をさせて頂くたびに、少しでも段取りや動きを無駄なく綺麗にしたいと錯誤しています。先輩方から教わったことが最優先であることはもちろんなのでございますが、その時々で変わりうる諸事情もございますし、いろんなことを大切にしながら、とにかく現時点でのベストを目指したい! 

『松浦の太鼓』は、一門で唯一師匠の源吾を覚えていらっしゃる兄弟子の梅蔵さんが色々と教えて下さいました。意外と扱う小道具が多いのですね、大高源吾というお役は! 今月で私もしっかり覚えなくては!

『春の寿』はとりあえず無事に、という感じでしたが、稽古後、一緒に後見で出ている先輩から、段取りに整理の余地ありということで、打ち合わせをしなおしました。新しいものはやっぱり難しゅうございます。

なんだかんだで12時間歌舞伎座にいました。ろくろく食事もできませんでしたが、それくらいが今の私には丁度よいのです。

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1 コメント

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舞台の広さ (カトウ)
2009-12-30 16:24:15
今年は歌舞伎座、新橋演舞場、南座、大阪松竹座と伺いましたが歌舞伎座が一番大きいですね。南座での助六は浅葱幕がきって落とされると揚巻他新造がいっぱいで梅之さんは何処にいらしゃるのかなかなか分からなかったです。人が重なって分かりにくかったです。また来月もよろしくお願いします。
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