今月のお芝居のお話をする前に、皆様から頂戴したご質問へお答えしなくてはなりません。
自分だけではわかりかねる内容でしたので、専門の方にお話など伺ってまいりました。お返事が遅くなりましたこと、まずはお詫びさせて頂きます。
<けい>様からの『毛剃』の鬘もヤクの毛か? というご質問。毛剃のほか、『俊寛』の瀬尾や『神霊矢口渡』の頓兵衛などでも見られるパーマ状の毛、床山用語で<癖付き>と申しておりますものは、<唐毛>、つまりヤクの毛を使います。ヤクの毛のようにしっかりした毛でないと、あのような癖はつかないのだそうです。鬘の土台に植え込まれた毛のうち、外側のみを<癖付き>とし、内側の普通の毛で鬢や髱などあらかたの形を作ったところで、それに被せるように<癖付き>の毛を合わせ、仕上げるそうです。
癖をつけるのは<鬘屋>さんの仕事、それを結うのは<床山>さんの仕事です。
<ひでかず>様からの、主演者にちなんだ唄が使われるのはどんな演目があるのか? というご質問。ご本人様もお書き下さったように上方狂言の『雁のたより』が有名ですね。「重ね井筒はナ ありゃ延若さんの紋所~」といったように、主人公三二五郎七役の俳優の紋と芸名を唄い込みます。
この他、ポピュラーな舞踊の歌詞の一部を、その月お勤めになる俳優さんに合わせて変更することもございます。平成14年4月歌舞伎座で、師匠と成駒屋(福助さん・橋之助さん)のご兄弟の3人で『おしどり』を上演いたしましたおりは、長唄のオキ(冒頭部)で、
『誉れは知るき 成駒の 手練名に負う 高砂の…』という風に、屋号を盛り込みましたし、平成15年12月歌舞伎座で、成駒屋(福助)さんが『舞妓の花宴』をお出しになった時は、
『開く扇の数々を 祗園守と末かけて 結ぶ歌舞伎の舞の袖 伝えてここに 成駒屋』
と、やはり長唄の歌詞に紋と屋号を入れました。
こういう例はもっと他にもあると思いますが、必ずそうする、というものではございませんので、念のため。
<揚羽>様からは、お化粧方には基準があるのか? というご質問を頂きました。とくに女形についてのことと存じますが、たしかに個人差が出やすいものでございます。お白粉のつき具合、紅の濃さ、眉や唇の形…。皆々、自分の顔立ちに合わせ、より美しく見えるよう工夫をしており、それは当然のことではございます。とはいえ、主役の方々よりも目立つような顔になってはいけないということは、かねがね先輩方より戒められておりますし、同じ役で大勢が出る時は、肌の色みや白粉の濃さなどは、<揃える>ようにも教わっております。
ただ、これは決して言い訳をするわけではございませんが、役者それぞれが使っている化粧品によって、色合いが違ってくるということは確かにございます。自分たちがそれぞれの肌質にあわせて選んで使っている化粧品まで、一つのものに統一することは不可能でしょう。そういう点も考慮しながら、その役<らしい>化粧、脇役としての<立場>をわきまえた化粧をきちんとできるよう、気をつけてまいりたいです。
<カトウ>様からは、女形の発声は裏声か? というご質問。これも人それぞれですね。私などは、裏に抜ける一歩手前の高さで喋るようにしております(張るところでは裏に抜くことも)。女方の発声法にも、これという基準があるわけではないので、それぞれの喉にあわせて、各人の工夫で喋るのですが、昔のレコードなど聴きますと、今よりもずいぶん調子は低いですよね。確実に変化をたどっておりましょう。
研修生が、まずぶつかる難関が、やはり女形の声の出し方です。
…『種蒔三番叟』のあと、いったん帰宅してこの記事を書いております。
もう少しのんびりしてから、再び楽屋と向かいます。
自分だけではわかりかねる内容でしたので、専門の方にお話など伺ってまいりました。お返事が遅くなりましたこと、まずはお詫びさせて頂きます。
<けい>様からの『毛剃』の鬘もヤクの毛か? というご質問。毛剃のほか、『俊寛』の瀬尾や『神霊矢口渡』の頓兵衛などでも見られるパーマ状の毛、床山用語で<癖付き>と申しておりますものは、<唐毛>、つまりヤクの毛を使います。ヤクの毛のようにしっかりした毛でないと、あのような癖はつかないのだそうです。鬘の土台に植え込まれた毛のうち、外側のみを<癖付き>とし、内側の普通の毛で鬢や髱などあらかたの形を作ったところで、それに被せるように<癖付き>の毛を合わせ、仕上げるそうです。
癖をつけるのは<鬘屋>さんの仕事、それを結うのは<床山>さんの仕事です。
<ひでかず>様からの、主演者にちなんだ唄が使われるのはどんな演目があるのか? というご質問。ご本人様もお書き下さったように上方狂言の『雁のたより』が有名ですね。「重ね井筒はナ ありゃ延若さんの紋所~」といったように、主人公三二五郎七役の俳優の紋と芸名を唄い込みます。
この他、ポピュラーな舞踊の歌詞の一部を、その月お勤めになる俳優さんに合わせて変更することもございます。平成14年4月歌舞伎座で、師匠と成駒屋(福助さん・橋之助さん)のご兄弟の3人で『おしどり』を上演いたしましたおりは、長唄のオキ(冒頭部)で、
『誉れは知るき 成駒の 手練名に負う 高砂の…』という風に、屋号を盛り込みましたし、平成15年12月歌舞伎座で、成駒屋(福助)さんが『舞妓の花宴』をお出しになった時は、
『開く扇の数々を 祗園守と末かけて 結ぶ歌舞伎の舞の袖 伝えてここに 成駒屋』
と、やはり長唄の歌詞に紋と屋号を入れました。
こういう例はもっと他にもあると思いますが、必ずそうする、というものではございませんので、念のため。
<揚羽>様からは、お化粧方には基準があるのか? というご質問を頂きました。とくに女形についてのことと存じますが、たしかに個人差が出やすいものでございます。お白粉のつき具合、紅の濃さ、眉や唇の形…。皆々、自分の顔立ちに合わせ、より美しく見えるよう工夫をしており、それは当然のことではございます。とはいえ、主役の方々よりも目立つような顔になってはいけないということは、かねがね先輩方より戒められておりますし、同じ役で大勢が出る時は、肌の色みや白粉の濃さなどは、<揃える>ようにも教わっております。
ただ、これは決して言い訳をするわけではございませんが、役者それぞれが使っている化粧品によって、色合いが違ってくるということは確かにございます。自分たちがそれぞれの肌質にあわせて選んで使っている化粧品まで、一つのものに統一することは不可能でしょう。そういう点も考慮しながら、その役<らしい>化粧、脇役としての<立場>をわきまえた化粧をきちんとできるよう、気をつけてまいりたいです。
<カトウ>様からは、女形の発声は裏声か? というご質問。これも人それぞれですね。私などは、裏に抜ける一歩手前の高さで喋るようにしております(張るところでは裏に抜くことも)。女方の発声法にも、これという基準があるわけではないので、それぞれの喉にあわせて、各人の工夫で喋るのですが、昔のレコードなど聴きますと、今よりもずいぶん調子は低いですよね。確実に変化をたどっておりましょう。
研修生が、まずぶつかる難関が、やはり女形の声の出し方です。
…『種蒔三番叟』のあと、いったん帰宅してこの記事を書いております。
もう少しのんびりしてから、再び楽屋と向かいます。
歌舞伎はなによりも役者の魅力をアッピールするのが本質ですから,タイトルや衣装や下座唄に屋号などが盛り込まれるのはアタリマエだったんですね.ただし,かならずしもそうではないというご指摘も,もっともなことかとおもわれます.
わたくしが気のついたものに,舞踊「夜這星」があります.「呼ばわる声も島屋」は,こんにちでも(たぶん)四世小団次に敬意を表して,そのままに演奏されているのではないでしょうか.
末筆ながら、お師匠梅玉丈の叙勲、おめでとうございます。
お化粧について、「美しく」かつ「主役の方々よりも目立つような顔になってはいけない」というのはなんとも難しそうですね。
梅之さんは女形さんのお化粧もお衣裳もとてもよくお似合いですよね~。
明日は夜の部を拝見します。楽しみです♪
今月は歌舞伎座昼の部五日に伺います。楽しみで今から胸がどきどきです。