梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

見えてますか?

2005年11月24日 | 芝居
今日は<SEATTLE'S BEST>から「目の話」です。
私は近眼でして、両目とも視力は0.3です。裸眼ですと、五、六メートル先から来る人の顔もはっきりわかりませんし、交通標識や駅の表示板も読めません。
中学生までは眼鏡をかけておりましたが、研修生になると同時にコンタクトレンズにいたしました。その頃から一日限りのワンデイタイプ。舞台で落っことしても大騒ぎしなくてすみますし、巡業中の忙しい朝晩でも、手入れの必要がないので楽ですし、持ち運びも手軽です。
…時々、うっかりレンズをつけないで家を出てしまったり、予備のレンズを持たないで友人宅に泊まりにいってしまったりして、レンズをしないで舞台にでてしまうことがあるのですが、舞台で演技をする上で、視力が悪いと困ることがあるかと申しますと、私の場合は、まだ程度が軽いほうですから、さしたる問題はございませんが、やはり立ち回りでは、相手との距離感ですとか、自分の居所がはっきり見えないと不安になります。それから<後見>で師匠の用事をするときも、同じように不便なものです(ことに黒衣の後見は顔を紗の黒布で覆っていますからなおさらです)。
逆に遠くが見えないということは客席の様子が判らないというわけで、緊張がやわらぐということもあったりします。皆様が思っていらっしゃる以上に、舞台から客席にいらっしゃる方々のお顔は見えるもので、役によっては皆様の視線でドキドキしてしまうのです(私だけかな?)。
逆にレンズをして困ることといえば、化粧を落とすときにクレンジングで浮かしたお白粉が目に入り、レンズの内側にまできてしまうこと。視界が靄の中のようになり、これは厄介です。洗顔後もしつこく残るときもあり、目薬をさしたり、ときにはレンズを新しいのにつけかえたりします。それからごくたまにですが、化粧中にうっかり外れてしまうことがあるのです。化粧中というのは、両方の手が鬢付け油やドーランなどで汚れていることが多く、できれば触りたくはないものの、しょうがないので拾ってみるともう目に入れたくないくらいの汚れが…。しかしここは我慢で、もとの目に収めるのです。

他の俳優さんでは、重度の近視の方、レンズが体質に合わないのでよく見えないまま舞台に出てらっしゃる方、さまざまいらっしゃいますが、足腰の健康とともに、「目」の健康も気をつけて、生活していかねばなりませんね。とりあえず、寝ながら本を読むのは辞めたいのですが、活字を読まないとなかなか寝付けないもので…。

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