気がつけば千穐楽、といった感じで終わりを迎えた『第13回 稚魚の会 歌舞伎会 合同公演』。
思い出は山のようにあるのですが、今日は『乗合船』でのエピソードをご紹介いたしたいと思います。
B班『乗合船』で、上手側の床几に座るメンバーは、向かって右から辰巳さん、京珠さん、京純さん、京由さん、私、そして松男さん。私以外は、『花ざかりの君たちへ』ではございませんが美形が揃い、なかなかな眺めでございましたでしょう。
さて私の隣の松男さん。今回が勉強会初参加ですし、初舞台から間もないので台詞をいう経験も少なかったせいでしょうか、<捨て台詞>に苦労しておりました。各シヌキが終わるごとに「ヨゥヨゥ」と囃すほかにも、例えば「面白いねェ」とか「見事なものですね」なんて、思い思いに喋っていいわけですが、それをどう言っていいものか、パッと思いつかないようでした。稽古が始まったばかりの頃は、私が話しかけても頷くだけだったり、鳥追い相手のなのに「そうですね」なんて敬語を使ったり。
もっと気楽に接してね、役のうえでは先輩後輩はないんだから、とこちらも申し上げ、リラックスしてくれるようにお願いいたしまして、お陰様でだいぶ緊張はとけ、初日を迎えたわけですが、それでも松男さんの方から私に話しかけてくることはなかったんです。
それが千穐楽、太夫と才造の<万歳>のくだりが始まるというとき、ついに初めて松男さんから、
「今年もいい年になりそうだなァ」
と声をかけてくれ、私は本当に嬉しくなり、返事をいたしましたのと同時に、この台詞を、どうして考えついたのか、ちょっと不思議にも思い、終演後に本人に聞いてみたのです。すると…。
前日の公演を観にきた松男さんのお知り合いが、三河出身の方だったそうで、この踊りを大変<懐かしがって>いたそうなんです。その方の子供の頃は、装束も唄も仕草も、この踊りとそっくり同じな<三河万歳>が正月の町を流していたそうで、それを思い出したというわけなのですが、子供心に、この一行がやってくると1年幸せになれるんだな、と思っていた、というお客様の話を聞いて、あの千穐楽の台詞が生まれたという次第。
…この経緯を聞いて、私はますます嬉しくなりました。こと『乗合船』のような風俗舞踊では、より役になりきることが大事です。世話の踊りらしい生活感、役々の雰囲気を掴むために、色々な工夫をせねばならないのですが、そういう役作りを、彼が稽古場から本番までずっと考えていてくれたこと、そしてお客様とのお話から一つのヒントをつかんで、自分の台詞を作ったこと。
役に対する真摯な気持ちがはっきりと伝わり、ああ、こういう仲間と一緒に勉強できて本当に良かったと、心から思いました。
松男クン、ありがとうね!
さて、本日をもちまして、『期間限定 梅之的《合同公演》情報ブログ』は終了させて頂きます。
期間中は皆様からのコメントにも返事をできませず、失礼をいたしました。皆様からのお言葉が励みとなり、役2ヶ月間のPR活動を続けることができました。
また来年も『合同公演』に参加できるかはわかりませんが、どうぞ皆様、私どもの修行の場、『稚魚の会 歌舞伎会 合同公演』を、いつまでも御贔屓下さいますよう、心よりお願い申し上げます。
また、8月の三宅坂でお会いできますことを楽しみに…。
思い出は山のようにあるのですが、今日は『乗合船』でのエピソードをご紹介いたしたいと思います。
B班『乗合船』で、上手側の床几に座るメンバーは、向かって右から辰巳さん、京珠さん、京純さん、京由さん、私、そして松男さん。私以外は、『花ざかりの君たちへ』ではございませんが美形が揃い、なかなかな眺めでございましたでしょう。
さて私の隣の松男さん。今回が勉強会初参加ですし、初舞台から間もないので台詞をいう経験も少なかったせいでしょうか、<捨て台詞>に苦労しておりました。各シヌキが終わるごとに「ヨゥヨゥ」と囃すほかにも、例えば「面白いねェ」とか「見事なものですね」なんて、思い思いに喋っていいわけですが、それをどう言っていいものか、パッと思いつかないようでした。稽古が始まったばかりの頃は、私が話しかけても頷くだけだったり、鳥追い相手のなのに「そうですね」なんて敬語を使ったり。
もっと気楽に接してね、役のうえでは先輩後輩はないんだから、とこちらも申し上げ、リラックスしてくれるようにお願いいたしまして、お陰様でだいぶ緊張はとけ、初日を迎えたわけですが、それでも松男さんの方から私に話しかけてくることはなかったんです。
それが千穐楽、太夫と才造の<万歳>のくだりが始まるというとき、ついに初めて松男さんから、
「今年もいい年になりそうだなァ」
と声をかけてくれ、私は本当に嬉しくなり、返事をいたしましたのと同時に、この台詞を、どうして考えついたのか、ちょっと不思議にも思い、終演後に本人に聞いてみたのです。すると…。
前日の公演を観にきた松男さんのお知り合いが、三河出身の方だったそうで、この踊りを大変<懐かしがって>いたそうなんです。その方の子供の頃は、装束も唄も仕草も、この踊りとそっくり同じな<三河万歳>が正月の町を流していたそうで、それを思い出したというわけなのですが、子供心に、この一行がやってくると1年幸せになれるんだな、と思っていた、というお客様の話を聞いて、あの千穐楽の台詞が生まれたという次第。
…この経緯を聞いて、私はますます嬉しくなりました。こと『乗合船』のような風俗舞踊では、より役になりきることが大事です。世話の踊りらしい生活感、役々の雰囲気を掴むために、色々な工夫をせねばならないのですが、そういう役作りを、彼が稽古場から本番までずっと考えていてくれたこと、そしてお客様とのお話から一つのヒントをつかんで、自分の台詞を作ったこと。
役に対する真摯な気持ちがはっきりと伝わり、ああ、こういう仲間と一緒に勉強できて本当に良かったと、心から思いました。
松男クン、ありがとうね!
さて、本日をもちまして、『期間限定 梅之的《合同公演》情報ブログ』は終了させて頂きます。
期間中は皆様からのコメントにも返事をできませず、失礼をいたしました。皆様からのお言葉が励みとなり、役2ヶ月間のPR活動を続けることができました。
また来年も『合同公演』に参加できるかはわかりませんが、どうぞ皆様、私どもの修行の場、『稚魚の会 歌舞伎会 合同公演』を、いつまでも御贔屓下さいますよう、心よりお願い申し上げます。
また、8月の三宅坂でお会いできますことを楽しみに…。
こうして若い役者さんたちが成長していかれるのだなぁと思い、感動しました。はなみずきさん同様涙がこみあげてきました。
客席にはっきりと聞こえる訳でもない<捨て台詞>であっても
役になりきること、それが芝居をますますホンモノにしていくのだと思います。
『期間限定 梅之的《合同公演》情報ブログ』お疲れさまでした。
お稽古だけでも大変なのに
こうして詳細に文章を綴ることはとてもご苦労なさったことと思います。
お疲れさまでした。
またこれからも舞台のお話、演目のお話、楽しみにしております。
先日、子供歌舞伎の様子をTVでちょっと紹介していました。子供さんたちを細かく指導していらっしゃる若手の役者さんの中に梅之さんもいらっしゃるのかなあ、なんて目を皿のようにして見ておりました。色々お疲れ様でございました。
今後もお稽古便り、巡業便り、期待しております。
これはもう、充分素敵なそして立派な「藝談」です。
よろしく御鳳声ください。
そして皆様、お疲れ様でした。
この期間限定のブログには、はじめて書き込みいたしました。よろしくお願いします。
丁寧な文章を毎回積み重ねていくさまを拝見いたしますと、自然とお人柄がしのばれる書き手の方だとお見受け致しました。
梅之様方のご健勝とさらなるご活躍を祈念いたします。
どうもありがとうございました。
毎日楽しみにしておりました、「合同公演」バージョンのブログが終わるのも淋しいですが…また再開されることを願いつつ…、梅之丈の元のブログもこれからもまた楽しみにさせて頂きます。
本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。
私はこの週末お芝居三昧でしたので、今日は日常に戻れるか少し心配だったのですが、あっさりと「いつもの毎日」が始まりました。日常に戻ることが出来て、一抹の寂しさを覚えるやら、ホッとするやら(笑)。
梅之さんの、『期間限定 梅之的《合同公演》情報bブログ』も幕が引かれるんですね。ちょっぴり寂しい気も致しますが、いつものスタイルも楽しみです。またいろんな「声」を届けて下さいね!
出演者の皆様の合同公演への思いが伝わってくるようです。
鳥追い姿のお写真きれいですね~。
“梅之さんはじめ”美形揃いの乗合船を拝見したかったです。
合同公演ブログ、毎日楽しく読ませていただきました。
通常モードの芝居日記の再開も楽しみにしております