梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

様々な思いを込めて出刃の飛ぶ

2006年12月13日 | 芝居
『不忍池で傷害事件発生!』
本日夕刻、上田藩江戸屋敷御用役、増田正蔵(51)に、何者かが出刃包丁を投げつけ、左目を負傷させるという出来事があり、目下犯人を捜索中。上記写真は犯行現場に落ちていた凶器の出刃包丁――。

ふざけた書き出しで申し訳ありません。『出刃打お玉』から、小道具の<出刃包丁>についてちょっとお話をいたしたいと思います。
音羽屋(菊五郎)さんが演じていらっしゃるタイトルロール、お玉が鮮やかに投げる出刃包丁。狙いは外さず百発百中、腐れ縁の男を驚かしてお灸を据えたり、自分が<初めての女>となった青年の窮地を救ってあげたり、ときには恨みの刃ともなったりいたします。
ふつう小道具であつかう包丁などの小型刃物類は、木などのごく軽い素材で作った全くのニセモノですが、今回は少々手のこんだ誂えとなっております。従来の小道具の包丁では、舞台に落とした(あるいは落とす)とき、いかにも作り物然とした、軽い音がしてしまいます。刃自体が木製なのですから当然なのですが、こと今回の芝居では、出刃包丁自体がお芝居全編の大切なアイテム。よりリアルな質感、持ったときの重量感を出したいということで、本物の出刃包丁を用意し、刃を削って落とした上でさらにコーティングを施し安全を確保、最後に舞台ばえするように着色(血糊も含む)したものを使っております。
そういう品ですので、持ってみるとズシリと重みが伝わってまいりますが、種々の要望、課題に確実に応える小道具方の皆様のご工夫、創意の素晴らしさを、あらためて感じるひと品だと思います。

実際舞台でどのように使われているかは、ご覧になってからのお楽しみでございます。

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3 コメント

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出刃にびっくり (ひさこ)
2006-12-15 19:16:00
出刃の飛ぶシーンはドキッとしました。菊五郎さんの変貌にもびっくりでした。歌舞伎の小道具、細部にまでこだわりがあるんですね!
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こわっ (SwingingFujisan)
2006-12-14 22:18:14
リアルです!! 私、刃物は苦手なので、夢に見そう。20日がこわい…
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なるほど本物が元でしたか (寅女)
2006-12-13 23:13:06
今週月曜に拝見しました。出刃が最初に柱にぶすって突き刺さった、みたいに見えてからもうとてもリアルに感じて、あんなの懐に入れてらして音羽屋さん大丈夫なのかしらと思ってました。こううかがってみてももやっぱり怖いですね~。第一こちらの写真からして回りにくるりとチョークでも書いてありそう。
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