梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

珍しく、そして面白く!

2009年07月08日 | 芝居
今日から藤間の御宗家でのお稽古です。

『双面』は、巡業に行っている仲間が多いので、今日は私が勤めさせて頂く<渡し守おしず>のくだり、それも先日増補された<手踊り>の部分をお稽古して頂きました。

法界坊・お組・松若・おしずという、登場人物全員による<手踊り>は、細かいことを申すようですが、原本によれば、お組そっくりの<法界坊と野分姫の霊>が、いよいよ怪しい本性を現してくる「恨めしの心や 人の恨みの深くして…」以下のくだり(お組がさんざん翻弄され、海老反りしたりするくだりね)のあとに入るのですが、今回は、ストーリーの展開のうえからも、怪しい雰囲気は後半に連続させたほうが“座り”がよいのではないか、ということで、理屈抜きの振り事である<手踊り>は、ひとくさり手前、お組と松若の<クドキ>のあとに前倒して挿入されました。それにともない、セリフも段取りも変更されています。

埋もれていた曲が、御宗家のご尽力で掘り起こされ、振りを新たにして蘇ったわけでございます。

花川戸 恋を待乳に三囲や 逢うにゃ牛島 鷲の森
縁の橋場も嬉しの森よ 白髭様のお世話なら 吾妻橋ではないかいな
それ それそれ 誓文そうかいな
離れぬ仲の縁じゃもの


…創元社『名作歌舞伎全集』所載の台本を拝読しますと、現行演出との相違点がとても興味深いですが、上記の歌詞は、同じ節で二くさりあるうちのひとつだということがわかります。

というわけで、今回の《合同公演》版『双面』は、本興行とはひと味違う趣き!
是非お確かめ頂きたく思います!

…それにしても、私にとっては地元の地名のオンパレードです!