梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記2の2『稽古をしたり拝見したり』

2007年11月28日 | 芝居
『将軍江戸を去る』の<総ざらい>と『寿曽我対面』の<初日通り舞台稽古>。
『将軍~』の大詰「千住大橋」は、昨日も書きましたように武家町人男女取り混ぜた群衆が出ますが、名題下部屋ではこの場といえば《泣く芝居》といっているくらいで、これまでの上演では、真山美保さんの演出で、徳川慶喜の台詞の要所要所に、周りからの泣き声、嗚咽が混じったものでした。
今回におきましては、師匠のお考えもあり、そういう箇所が<段取り>や<きっかけ>めいた芝居にならないよう、“気持ちで”やるような配慮がなされました。これまでにくらべれば、泣きが足りないと思われるかもしれませんが、幕切れに近づくにつれてだんだんと哀しみが高まってゆき、最後の最後で群衆の<将軍恋し>の思いが発露される…。そんなふうにできればということです。

とはいえやっぱり難しいのは間合いでございます。慶喜が千住大橋に足を踏み出すが、立ち止まって少しの思い入れ。そして新たに踏み出すその歩みにかぶさるように周りからの泣き声が…という情景をつくるためには、どこかで慶喜の動きを見なくてはならないのですが、並みいる面々、「顔を上げるなよ」という将軍の言葉の通り、大地にひれ伏しております。さァその体勢からどうやって師匠の動きを窺いましょう?
舞台に行ってみないとわかりませんが、<気>みたいなモノが感じ取ることができたらよいのにね…。


『寿曽我対面』では、芝居がはじまってから衣裳を着出しても十分出番に間に合うという鬼王役。麻の裃に素足という地味で質素ななりは、また者、陪臣という立場をあらわしておりますが、豪華で様式的な拵えのオンパレードである『対面』の舞台面からすると、逆に目立つ存在といえるかもしれません。弟子としての仕事はとっても少ないお役でございますが、『対面』というお芝居自体は、<定式><吉例>が沢山出てくるとっても勉強になるお芝居です。本興行でこの演目に携わるのは初めてですので、これを機会に色々と学んでゆきたいです。

梅丸が太刀持ちを勤める『勧進帳』も<舞台稽古>。久しぶりに正面から『勧進帳』という芝居を拝見しました。すでに3演目となる彼の太刀持ち(芸術祭、歌舞伎座、そして今月南座)。最初のころより身長もだいぶ伸びました。
続く『京鹿子娘道成寺』も拝見させて頂きましたが、こちらは山城屋(坂田藤十郎)さんの喜寿記念の演し物。上方歌舞伎の復興を掲げていらっしゃるお方の演目ということもあり、所化役に、<上方歌舞伎塾>の卒塾生が大勢出演しておりますヨ。

7時過ぎに帰宅、厚揚げとチンゲンサイの煮物を作って夕食。
終日薄曇りの2日目でした。