梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

舞台が変われば…

2007年11月04日 | 芝居
『種蒔三番叟』の舞台装置が、いつもの<松羽目>でないことは先日お話しいたしましたが、これは、後に上演される『素襖落』も<松羽目>でございますので、お互いの印象が<つく>ことを避ける意味もございます。
舞台面が変わると、それに付随して色々な変更があるというもので、この度は演奏家の皆様の<裃の色>に工夫がなされております。
というのも、いつもの松羽目の舞台面ですと、本行(お能)にならうということで、正面にお囃子ご連中が並び、上手の<山台>に清元ご連中が並ぶというのが、基本的な居所となるのですが、松羽目以外の書割りとなりますと、お囃子さん方は正面にいることができない。そこで今回は上手に<雛壇>を作り、清元さんとお囃子さんが一緒に並ぶことになりました。

そうなりますと、清元の方とお囃子の方が着用する裃の色をどうまとめるかということになります。ご存知のように、清元の方は、常に濃い緑色の裃ですが、お囃子さん方は演目や公演ごとに違った色、柄になり、決まったものはございません。
一つの雛壇に、違う色の裃の演奏家が並ぶということはまずないことなので、清元さんと同じ、緑色の裃をお囃子さんも着るということになりました。
舞台面に描かれた、若竹の青、松葉の緑とも調和し、清々しい雰囲気になっております。

ちなみに三番叟と千歳の後見二人の裃は、主演は私の師匠ですので、師匠が『口上』で着るのと同じ<芝翫茶>色、梅の模様が<熨斗目(のしめ。胸の下から膝上にかけての部分にのみ柄をあしらう模様の出し方)になった裃です。さすがに後見まで真緑では煩くなってしまいましょう。
この裃、入門して初めて着ることができました。師匠と同じ柄の裃! なんだか嬉しい気持ちです。