梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

顔見世月稽古場便り・参

2005年10月30日 | 芝居
今日は『熊谷陣屋』が<初日通り舞台稽古>、引き続いて『鞍馬山誉鷹』が<舞台にて総ざらい>でした。『熊谷陣屋』の前に、三演目のお稽古が入っておりましたので、何時くらいから『熊谷陣屋』が始まるかと思っておりましたが、三時半頃となりました。…私は、すぐ上の兄弟子と二人で<軍兵>に出演しておりますので、師匠梅玉の用事は他の兄弟子、弟弟子の皆さんにお願いして、自分達の役に専念させて頂いております。
舞台では、師匠が演じます源義経が登場しますと、兄弟子の軍兵が<敷き皮>という、身分の高い人が座る場所に敷く熊皮の敷き物を敷いて、そこに私が<陣床几>を設置して、座って頂くのですが、<敷き皮><陣床几>ともに、ここぞといういい居所に設置しなくてはなりません。毎日毎日違う場所、というのではいけませんので、気を遣うものです。今日はお稽古なので、舞台上で師匠に伺いながら場所を決めました。あとはこの居所を覚えて、ひと月必ずそこに設置するように注意するわけです。どんなお芝居でも、モノを置く場所、自分が立つ場所は、常に一定に保たれなければいけませんので、そこがなかなか難しいところでございます。

『熊谷陣屋』の舞台稽古は順調に終わり、舞台は『鞍馬山誉鷹』へと道具転換。三十分ほどで一面の紅葉に包まれた鞍馬山へ変わります。大道具がおさまったところで、まず立ち回りのみの稽古。鷹之資さん抜きで、我々の段取りをつけるところから始まりました。…さあ実際の舞台に立ってみると、長唄さん、お囃子さんが上手下手に居並ぶなかで、なかなか今までのお稽古の通りには動けないところがいくつか出てまいりまして、並び方を変えたり、あるいはパートごとに出る人数を減らしたり。変更が多々ありました。一通り変更が済んだところで、鷹之資さんが入り、演奏も加わって再び稽古。鷹之資さんは手順を完璧に覚えていらっしゃいますが、いくつか我々の方で動きをリードする部分がありますので、その辺りの段取りもしっかりとつけておきました。
そうした上での通し稽古となりましたので、全てが終わりましたのが七時ごろでしたでしょうか。

…『鞍馬山誉鷹』、なかなか大規模な立ち回りとなりました。なにしろ出ている人数が十八人ですからね! これは相当多い部類に入ります。私、こういう大きな立ち回り、しかも一から作り上げてゆくものに参加させて頂くのは初めてでして、お稽古の段階から、いろいろと勉強になることばかりでございました。具体的なことはまたおいおいお話させて頂くとしまして、まずは明日の舞台稽古を成功させるよう、共演者の皆さんとイキを合わせて、まとまりのある立ち回りにできますよう、未熟ながらも努力してまいりたいと思います。
巡業以来、久々のトンボも返ります! 怪我には十分注意して頑張りましょう!

…今日の写真は今月の私の<化粧前>を。おや?鏡に映っているのは誰でしょう?(ヒント・私の同期です)