梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

小さな劇場で・パート2

2005年10月22日 | 芝居
本日は池袋のシアター・グリーンで、<劇団偉人舞台>の新作、『リ・バース ルーム』を拝見してまいりました。こちらの劇団は、御縁があって家族ぐるみで応援させて頂いておりまして、私は今回で四回目の観劇。母と妹とで伺いました。
男性俳優だけの劇団でして、お芝居の中にも、女役が出てきません。そんな制約がありますものの、毎回毎回色々な設定で、面白い舞台を見せてくれます。今回は、密室に閉じ込められた男たちに振りかかる不条理な出来事と、意表をつく真相をサスペンスタッチで描いたストーリーで、舞台転換なしの<一杯道具>を、二時間ノンストップでみせる意欲作。八人の出演者の皆さんの、緊迫感溢れる演技に引き付けられ、とても面白く拝見しました。劇場も客席数が百五十あまりという小空間なのも、お芝居の効果を盛り上げておりました。私の<お芝居月間>を締めくくる、素敵な作品でございました!

それにしても、今日の劇場といい先日のベニサン・ピットといい、手を伸ばせば役者に触れられそうな空間でのお芝居というものは、私どもにとりましては日頃なかなか体験することがないので、とても興味深いです。地方巡業での会舘、あるいは康楽館や金丸座といった一昔前の芝居小屋、もしくは歌舞伎フォーラム公演を行う江戸東京博物館のホールなどは、確かに規模も小さく、お客様との距離も縮まりますが、実は客席と舞台の<高低差>は意外とあるもので、高座、という表現がありますけれども、お客様が見上げる位置に、我々がいるということは、歌舞伎の舞台ではどこでもほとんど変わらないのです(あくまで一階席を基準にお話しております)。
しかしながら現代演劇では、舞台が客席とほとんど同じ高さだったり、あるいは見下ろす、三方、ときには四方を囲むように客席があるなんていうのはザラにあることですよね。そういう環境で演技をするというのは、きっとお客様の視線が痛いほど感じられるのでしょうね。
私なんか、もう大緊張でうろたえてしまうんではないでしょうか。前のお客さんと、目があったりなんかしたら、もう……。

ずいぶん前の話ですが、<ジンジャントロプスボイセイ>という不思議な名前の劇団が、チェーホフの『かもめ』を、駒場大近くのホントに小さなスタジオで上演したのを見に行ったことがあります。十畳程のフロアが舞台と客席。高低差どころか境目もないのです!二方の壁際に設置されたベンチに座って、目の前一メートル足らずで動く役者を見たわけですが、これには観客である私まで緊張してしまって、奇妙な体験でした!