梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

二つの劇場『千穐楽』

2005年10月26日 | 芝居
本日、無事に国立劇場公演を終えることができました。今日まで御来場下さった皆様、どうも有難うございました。
様々な仕掛け、見せ場を用意しての通し狂言、いかがだったでしょう? これまであえて書かなかったのですが、大詰の幕切れ、石段をセリ下げると、背景の<黒幕>が上がって<ホリゾント>だけとなり、そこには大空と雲、やがて巨大な満月が映し出され、非常に抽象的な光景を背にしての、天王寺屋(富十郎)さんと師匠梅玉の両花道の引っ込み。それに合わせて舞台上で演奏する三味線の合方<送り三重(さんじゅう)>も、今回は左右に一人ずつという新工夫で、さらには聲明の声(録音ですが)をかぶせるという全く新しい幕切れとなりました。客席からは、どう見えましたか?

国立劇場の歌舞伎公演では、毎回出演者、スタッフを対象に『国立劇場賞』の選考がございまして、今月は、奴音平、実は物かはの蔵人満定・崇徳院の二役を演じられた音羽屋(松緑)さんが「優秀賞」を、千束姫実は高倉宮以仁王を演じられた萬屋(梅枝)さんが「奨励賞」を受賞されまして、公演終了後の授賞式で賞状の授与がございました。式後は出演者、関係者全員で<一本締め(もう間違えません!)>をし、公演の無事終了をお祝しました。
それからは、師匠の楽屋で一門そろいましての「おめでとうございます」の御挨拶、そして撤収作業。三十分ほどで片付きました。荷物は師匠の物も我々弟子達の物もみなまとめて、運送屋さんが次なる出演劇場、歌舞伎座へ運んで下さいました。

荷物と一緒に私も、というわけではございませんが、折角早くに作業がすんだので、やはり本日千穐楽の歌舞伎座の最終演目『心中天網島 河庄』を拝見に伺いました。このお芝居は、今年暮に“坂田藤十郎”を御襲名なさる成駒屋(鴈治郎)さんの、“鴈治郎”のお名前での最後の演目となるわけですが、とりわけ今日は、本当に最後の最後の日。その舞台を幸運にも拝見できましたのは有り難いことでございます。大向こうさんの掛け声もさかんに掛かって盛り上がりましたが、『河庄』の幕が閉まってから、成駒屋さんの御挨拶が特別にございました。『河庄』の舞台装置も、治兵衛の扮装もそのままの成駒屋さんお一人による御挨拶でして、今日の日を迎えた感慨と、襲名への決意をおっしゃられ、客席からはさかんな拍手と声援がかけられておりました。こういう場面に居合わすことができて、嬉しゅうございます。

さて、今月も無事終わり、明日はお休みです! ゆっくり身体を休めようか、それとも欲張ってお芝居、高座へ足を運ぶか、朝の気分で決めましょう!

そしてとうとう画像を掲載する方法をマスターしました! まずは千穐楽にはつきものの『大入袋』を公開します! これからも、著作権、肖像権に触れないものを、折々にお見せしたいと思いますのでよろしくお願いします。

稽古場だよりは、明後日からになります。