梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

自由参加のお稽古

2005年10月23日 | 芝居
昨日から、社団法人日本俳優協会の主催によります『既成者研修』がはじまりました。
この『既成者研修』と申しますのは、主に名題下俳優を対象の中心とし、毎月毎月の公演出演のためにお稽古ごとに通う時間がない人たちに、劇場内の施設を使って短期間ながらも芸事のお稽古ができるようにしているものでございます。不定期に開催されておりますが、これまで日本舞踊、義太夫節、長唄三味線、立ち回りなどの課目が、それぞれのプロの方達を講師としてお願いしまして、各劇場の稽古場、研修室などで行われてまいりました。受講料など一切の費用がかからないのも大変有り難く、参加不参加は個人の自由となっておりますけれど、毎回多数の出席者が受講しております。
今月の課目は日本舞踊。宗家藤間流の藤間弘(ひろむ)師の御指導で、『関三奴』でございます。私は稽古初日の昨日は、御承知の通りの用事で伺えませんでした(研修の開催が、お芝居の約束よりも後に決まったものですから)ので、今日から参加。周りの名題下の方々は、昨日教わった振りはもう覚えていらっしゃいましたけれど、私はなにしろ白紙状態ですので、皆さんについてゆくのが精一杯。それでも藤間弘師が、何回もお浚いして下さいましたので有り難かったです。今日新たに教わる振りのところでは、やっと皆さんと同じラインに立ったという感じ。一時間近いお稽古は、ふだんの御宗家のお稽古場での稽古よりかは長いものですし、質問もできますので、未熟ながらも、とにかくじっくりと覚えることができました。残り二日間のお稽古も、しっかり出席して、勉強させて頂きます。

…踊りでも、立ち回りでもそうなんですが、長期間体を動かさないでおりますと、いざというときの<勘>が働かなくなってしまうんですよね。どんな演目、曲にも共通な、こうしたら次はコレ、とか、この音ではこう動く、という決まりごとも、ぱっと頭に浮ばなくて、ただただうろたえてしまうんです。ですので、そういった条件反射的な<身体の動かし方>を学ぶ意味でも、日々のお稽古は必要なんですね。単に『供奴』の振り、『景清』の振りを覚えるという以上に、様々な曲を通じて、<舞踊の基本>を学んでゆく。『吉野山』や『雨の五郎』の立ち回りに出させていただくなかで、<立ち回りの身体>を作ってゆく。お稽古や実際の舞台で学んだものが、日頃の芝居に応用できるようになってゆけたら、と思います。
とまあエラそうなことを申し上げてしまいましたが、今は御指導下さる方々のお教えをしっかりと守り、地道にやってゆくしかございません。いつかこのお稽古が実を結ぶことを信じて、頑張ってまいりましょう!