≪ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。(鴨長明 方丈記)≫
この世に常なるものはない。
すべては流転する。
今そこにあるもの、繁栄も安定も永久ということはない。
鴨長明は、無情の世をゆく川の流れに見立て、虚しくもはかない人生をその水の上に浮かぶうたかた(泡沫)に例えた。
◇ ◇ ◇
「私は法律は守るが、モラル、正義の実在は否定している。合法と非合法のスレスレの線を辿(たど)ってゆき、合法の極限をきわめたい」。
これは「ホリエモン語録」からの引用・・・ではない。
昭和23年戦後の混乱期に「光クラブ事件」を引き起こした山崎晃嗣という人物の「語録」からの引用である。
この人物の言動は同じ東大出の頭の良さを売り物にしていた点でホリエモンの言動と重なる。
山崎は東大在学中にヤミ金融「光クラブ」を設立。
商店主らに高利で金を貸し付け、事業を急拡大させて世間を驚かせた。
敗戦により人々の価値観は揺れ動いた。
戦前の慎み深い日本人らしさは失われてアメリカ型の合理主義に走る若者が増殖した。
「アプレゲール」とは反社会的で無責任な若者たちをさす。
山崎の「アプレゲール」そのものの生き方はそんな「大変動の中から生まれた時代の申し子」だといわれた。
結局山崎は、物価統制令違反などの容疑で逮捕され、それがきっかけとなって事業が破綻し、青酸カリを飲んで自殺する。
一方、第二の敗戦といわれたバブル崩壊は、人々の倫理観を揺さぶり、拝金主義を蔓延させた。
そんな退廃的な社会風潮の中かアダ花のように咲き誇ったのが「ヒルズ族」で代表されるIT企業化集団である。
その中の代表選手としてマスコミでヒーロー扱いされていたのがホリエモン。
ドラえもんにも似た小太りの体系とどんぐり眼の一見愛嬌ある表情。
そして何よりも東大卒と言う肩書きと時代の先端を行くIT起業のオーナーと言う知的印象。
時代の寵児に相応しい印象にメディアはいっせいにヒーローとして持ち上げた。
だがホリエモンも山崎も所詮は流れに浮かぶうたかた(泡沫)に過ぎなかった。
近く行われる村上Fの裁判にホリエモンは今度は証人として出廷すると言う。
≪祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ
(平家物語)≫