日本語にはそのものズバリの表現をしないで、婉曲な言い回しでこれに代える言葉が多い。
「援助交際」が「えんこう」となると、もはや「未成年売春」と言った深刻な意味は薄らいで、同時に犯罪意識も希薄になってしまう。
売春婦と言う言葉も文字通りの意味を考えると、日本語的婉曲表現の極地とも言える。
春を売る女の売春婦。
これを辞書で引いて見た。
≪売春をする女。売笑婦。淫売婦。≫
淫売婦はともかく、春を売るとか、笑いを売るとはずい分風雅な言い回しだ。
だが笑いを売る女芸人の青木さやかを売春婦とは呼ばない。
そこでしつこく今度は売春を引いて見た。
≪女性が報酬を得ることを目的として不特定の相手と性交すること。売淫。売色。売笑。≫
「色を売る」という画家のような表現もあるが、さすがにここまで来ると婉曲な表現で逃げるわけにはいかない。
そのものズバリの性交を売るとか、淫を売ると言う説明になる。
売春婦が慰安婦に変化し、それに特殊のイデオロギーが絡み「従軍慰安婦」という言葉が生まれた。
更に「日本軍に強制連行」が加わると完全なるイデオロギー用語の誕生である。
≪日本軍に強制連行された従軍慰安婦≫
ついでに売春婦を和英でも検索して見た。
≪売春婦|a prostitute; a hooker; a hustler; a streetwalker≫
どんなに英語が苦手な人でも売春婦をそのまま「Spring Sale Girl」と訳すものはおるまい。
それでは化粧品メーカーの春のキャンペーンガールにでも間違えられてしまう。
ところが慰安婦は日本独特の表現と断りながらも「Comfort Woman」と言う直訳単語が英語でも一般化しつつある。
寿司がSushi 、天麩羅がTenpuraとなる事は日本の誇りとしても、慰安婦がComfort Womanと言う独特の英語になるのは日本の恥そのものである。
慰安婦まではともかく、「従軍慰安婦」は「性奴隷」と言うオドロオドロシイ表現に置き換えられつつあるのが昨今のアメリカメディアの報道だ。
「性奴隷」と言う刺激的な単語は、英字メディアでもSexual Slavery、Sex Slave, Sex Slavery と、必ずしも一定しておらずこの単語が未だ熟していない事を表している。
時を遡ること60数年前。
日本軍相手の「慰安婦」の英語翻訳に悩まされた米軍人がいた。
ビルマ、陥落後1944年8月10日前後の、掃討作戦により捕らえられた、20人の韓国人「慰安婦」と、2人の日本民間人の取調べを行い英文の調書を作成したAlex Yorichi と言う米軍人のことである。
この米軍調書の目的をその前文から抜粋すると、
≪このレポートは日本人がどのようにして韓国人「慰安婦」を募集したか、彼女らの生活、仕事の状況、彼女らの日本軍人に対する関係と反応、そして彼らの軍事情勢に対する理解度を明らかにする。≫と言うことである。
内容は「慰安婦」の仕事の状況が詳しく述べられているが、前文のみを次に掲載する。
UNITED STATES OFFICE OF WAR INFORMATION
Psychological Warfare Team
Attached to U.S.Army Forces India-Burma Theator
APO 689
Japanese Prisoner
of War Interrogation
Report No. 49. Place interrogated : Ledo Stookade
Date Interrogated : Aug. 20 - Sept. 10, 1944
Date of Report : October 1, 1944
By : T/3 Alex Yorichi
Prisoners : 20 Korean Comfort Girls
Date of Capture : August 10, 1944
Date of Arrival : August 15, 1994
at Stookade
PREFACE
This report is based on the information obtained from the interrogation of twenty Korean "comfort girls" and two Japanese civilians captured around the tenth of August, 1944 in the mopping up operations after the fall of Myitkyin a in Burma.
The report shows how the Japanese recruited these Korean "comfort girls", the conditions under which they lived and worked, their relations with and reaction to to the Japanese soldier, and their understanding of the military situation.
A "comfort girl" is nothing more than a prostitute or "professional camp follower" attached to the Japanese Army for the benefit of the soldiers. The word "comfort girl" is peculiar to the Japanese. Other reports show the "comfort girls" have been found wherever it was necessary for the Japanese Army to fight. This report however deals only with the Korean "comfort girls" recruited by the Japanese and attached to their Army in Burma. The Japanese are reported to have shipped some 703 of these girls to Burma in 1942.
調書の作成者は「慰安婦」と言う言葉は日本人特有のものである、と記しながらも「慰安婦」の実体を次のように記している。
≪「慰安婦」とは、売春婦にすぎない。もしくは「野営追随プロ」、軍人の利益の為日本陸軍に追従する。≫
そうなんです!
60数年前の素直な米軍人の目に映る「慰安婦」は悲惨な「性奴隷」ではなく「売春婦(prostitute)若しくは「野営追随プロ」(professional camp follower)に過ぎなかったのだ。
◇
◆古い戦争映画に見る「慰安婦」
「慰安婦」と言っても戦争の体験の無いものにとっては活字の説明でこれを想像するしかない。
だが、古い戦争映画には意外とアッケラカンに「慰安婦」と兵隊の交流がそのまま描かれている。
最近有線放送で連日放映されている「兵隊やくざシリーズ」にも軍隊と「慰安婦」の交流が描かれている。
勝新太郎演ずる元やくざの二等兵と田村高広演ずる相棒のインテリ上等兵が大陸戦線で戦争の悲喜劇をコミカルに描く戦争映画のシリーズ。
各シリーズで必ずと言っていいほど前線の兵士と「慰安婦」の交流が面白おかしく描かれている。
劇中、勝新の主人公は腕っ節も強く愛嬌もあるので「慰安婦」に惚れられるが、田村のインテリ上等兵は「慰安婦」を買うことはない。
劇中の「慰安婦」と前線兵士との交流はただ体を金で売る買うだけの関係ではない、明日の命も知れぬ異国での若い男女の淡い恋愛関係が描かれている。
事実、「慰安婦」と兵士が結婚した例も数多く見られると言う。
岡本喜八監督の「独立愚連隊」では、「慰安婦」を若き日の雪村いずみが演じて、主人公の兵士と恋愛関係になっている。
映画の製作者も出演者も戦争体験者の年代と思われるが、いずれの映画にも「性奴隷」は登場しない。
因みに「独立愚連隊」では日本人女優の中北千枝子が朝鮮人慰安婦を演じている。
◆独立愚連隊【動画】http://www.youtube.com/watch?v=hWdEpjuIDz4
◆同配役http://www.jmdb.ne.jp/1959/ci004400.htm
◆兵隊ヤクザhttp://homepage3.nifty.com/pyonpyon/HeitaiYakuza.htm
◆米軍戦時調書http://www.geocities.com/theaterapo689/
◆戦争体験者の小野田寛郎さんが
「私が見た従軍慰安婦の正体」と言う文を雑誌「正論」に寄稿していた。
この文でも「何処にもいなかった性奴隷」とある。
http://www13.ocn.ne.jp/~autofilm/onoda.html