アメリカが三権分立を尊重する民主主義の国である事に異論は無い。
そのアメリカ下院で「従軍慰安婦」の議決案提出に違和感を覚える知日アメリカ人識者も多い。
知日、親日派の代表とも思われていたジェラルド・カーチス教授も、「(「従軍慰安婦問題」について)日本は70年前に起きた不幸な事実は認めて謝罪すれば事態は沈静化する」と、日本専門家らしからぬ発言をする一方、アメリカが「従軍慰安婦」を議会で取り上げることには疑念を呈している。(3月11日「報道2001」)
そのアメリカの下院に2月15日「従軍慰安婦」に関する日本政府への謝罪決議案が提出されるや、ニューヨーク・タイムズを筆頭にアメリカメディアが異常反応して一斉に日本攻撃をしているのは周知のとおり。
一方、アメリカの司法の最高機関である米連邦最高裁判所が昨年下した「従軍慰安婦」に関する司法判断について報じる米メディアや日本メディアは産経新聞以外に筆者は知らない。
対日謝罪決議案提出のおよそ一年前の2月21日、米連邦最高裁判所は、「従軍慰安婦」に関する中国や韓国の女性の日本政府を相手取った損害賠償訴訟に却下の判決を下していた。
この判決は米国内での「従軍慰安婦」に関する司法の最終判断である。
三権分立の国アメリカでの司法の最終判断は、日本で言えば最高裁判決でありその法律的且つ社会的意義は大きいはずだ。
ならば、もう慰安婦問題に関して日本側に賠償や謝罪を求める訴えは米国内では起こせない筈ではないのか。
米国では国際法違反に対する訴訟は地域や時代にかかわらず受けつけるシステムがあると言う。
一方、外国の主権国家については「外国主権者免責法」により、その行動を米国司法機関が裁くことはできないとしている。
ところが同法には外国の国家の行動でも商業活動は例外だとする規定があるらしい。
元慰安婦側は慰安婦を使った活動には商業的要素もあったとして、日本政府への訴えを起こしたのだった。
しかし、兎にも角にも米国の司法最高機関がこの訴訟を取り上げた根拠は「慰安婦を使った活動、言葉を変えれば、日本軍が慰安婦に関与した活動は、商業的要素もあった」と言うことになる。
一方米下院での日本政府への従軍慰安婦に対する謝罪決議案には「・・・日本軍が若い女性を強制的に性奴隷にして、あげくの果てに殺したり、自殺に追いやった]としている(2月19日、稲田朋美議員の国会質問)
元慰安婦たちの米連邦最高裁判所への提訴根拠の「商業的要素もあった」と言う判断と、米下院における「強制的性奴隷」と言う判断の整合性は既に破綻している。
強制的性奴隷に「商業的要素」のあるはずはない。
「商業的要素」のある売春婦についての英単語は、日本語の「慰安婦」のような曖昧性のない「prostitute」と言う立派な言葉があり、「sexual slavery」(性奴隷)とは厳密に区別される。
「慰安婦」(売春婦)が「comfort woman」であると言う表現はYahoo辞書に出ているが、Japanese knowledgeとあり日本独特の表現と断っている。
手元に有る1992年発行の大修館発行の「ジーニアス英和辞典」にはcomfort womanには慰安婦と言う説明はない。
日本のメディアは取り上げなくとも、一部ブログが取り上げている米連邦最高裁判所の最終司法判断を報じた産経記事をどんどんコピオぺして、次の二点を周知させるべきだろう。
①米国内では「従軍慰安婦」に関して日本政府に謝罪や賠償を求める訴えは起こせない。
②慰安婦には「商業的要素もあった」と言う最高裁が取り上げた根拠と、米下院での「謝罪議決案」での「性奴隷」との整合性は破綻している。
2月21日の米連邦最高裁判所の判決までには、2000年9月のワシントン連邦地方裁判所での提訴以来6年近い長い法廷闘争の結果だった。
しかし、この長い異国での法廷闘争に元慰安婦の老婆達が粘り強く継続出来たのには日本でのこの種の裁判に見られる例と同じく強力な支援団体があった。
その元慰安婦支援組織は「ワシントン慰安婦問題連合会Inc」と言う団体。
在米韓国人や中国人か成る反日政治団体で資金面でも会社組織の性格を持つと言う。
この「ワシントン慰安婦問題連合Inc」は実は二〇〇〇年十二月に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」にも深くかかわっていた、と言うから世界を股にかけた中韓の「国際謀略組織」の暗躍には改めて驚かされる。
◆産経報道を扱ったエントリー:
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【再録・資料】
【緯度経度】ワシントン・古森義久 米国での慰安婦訴訟の教訓
2006年03月18日 産経新聞 東京朝刊 国際面
慰安婦問題といえば、最近でもなおNHKの番組や朝日新聞の報道をめぐって、論議が絶えないが、米国内でこの問題で日本を非難する勢力にとって大きな後退となる最終判決がこのほど出された。米国の司法や行政の良識を思わせる適切な判決だったのだが、ここにいたるまでの五年以上の原告側の執拗(しつよう)な動きからは日本側にとっての多くの教訓もうかがわれる。
米連邦最高裁判所は第二次大戦中に日本軍の「従軍慰安婦」にさせられたと主張する中国や韓国の女性計十五人が日本政府を相手どって米国内で起こしていた損害賠償請求などの集団訴訟に対し、二月二十一日、却下の判決を下した。この判決は米国内でのこの案件に関する司法の最終判断となった。もう慰安婦問題に関して日本側に賠償や謝罪を求める訴えは米国内では起こせないことを意味する点でその意義は大きい。
この訴えは最初は二〇〇〇年九月に首都ワシントンの連邦地方裁判所で起こされた。米国では国際法違反に対する訴訟は地域や時代にかかわらず受けつけるシステムがある一方、外国の主権国家については「外国主権者免責法」により、その行動を米国司法機関が裁くことはできないとしている。ところが同法には外国の国家の行動でも商業活動は例外だとする規定がある。元慰安婦を支援する側は慰安婦を使った活動には商業的要素もあったとして、この例外規定の小さな穴をついて、日本政府への訴えを起こしたのだった。
日本政府は当然ながらこの種の賠償問題はサンフランシスコ対日講和条約での国家間の合意で解決ずみだとして裁判所には訴えの却下を求めた。ワシントン連邦地裁は二〇〇一年十月、日本側の主張を認めた形で原告の訴えを却下した。原告側はすぐに上訴した。だがワシントン高裁でも二〇〇三年六月に却下され、原告側は最高裁に上告したところ、最高裁は二〇〇四年七月に高裁へと差し戻した。ちょうどこの時期に最高裁が第二次大戦中、ナチスに財産を奪われたと主張するオーストリア女性の訴えを認め、オーストリア政府に不利な判決を下したため、日本政府を訴えた慰安婦ケースも類似点ありとして再審扱いとしたのだった。
だが、ワシントン高裁の再審理でも日本政府に有利な判断がまた出て、原告は二〇〇五年十一月にまた最高裁に再審を求めた。その結果、最高裁が最終的に決めた判断が却下だったのだ。
六年近くもこの訴訟を一貫して、しかもきわめて粘り強く進めた組織の中核は「ワシントン慰安婦問題連合Inc」という団体だった。在米の韓国人や中国人から成り、中国政府関連機関とも連携する政治団体である。Incという語が示すように資金面では会社のような性格の組織でもあるという。
この「ワシントン慰安婦問題連合Inc」は実は二〇〇〇年十二月に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」にも深くかかわっていた。この「法廷」は模擬裁判で慰安婦問題を主に扱い、日本の天皇らを被告にして、その模擬裁判を伝えたNHK番組が日本国内で大きな論議の原因となった。「慰安婦問題連合」はまた、その少し前には中国系米人ジャーナリスト、アイリス・チャン氏著の欠陥本、「レイプ・オブ・南京」の宣伝や販売を活発に支援した。
この種の組織は日本の戦争での「侵略」や「残虐行為」を一貫して誇張して伝え、日本の賠償や謝罪の実績を認めずに非難を続ける点では間違いなく反日団体といえる。その種の団体が日本を攻撃するときによく使う手段が米国での訴訟やプロパガンダであり、その典型が今回の慰安婦問題訴訟だった。米国での日本糾弾は超大国の米国が国際世論の場に近いことや、日本側が同盟国の米国での判断やイメージを最も気にかけることを熟知したうえでの戦術だろう。日本の弱点を突くわけである。
だから「慰安婦問題連合」は日ごろワシントン地域で慰安婦についてのセミナーや写真展示、講演会などを頻繁に開いている。最高裁の最終判決が出るつい四日前も下院議員会館で慰安婦だったという女性たちを記者会見させ、「日本は非を認めていない」と非難させた。
だが米国の司法は最高裁での却下という結論を打ち出した。行政府のブッシュ政権も一貫して「日本の賠償は対日講和条約ですべて解決ずみ」という立場を裁判の過程でも示した。
しかし立法府である米国議会は「慰安婦問題連合」などの果敢なロビー工作を受けて、慰安婦問題ではまだ日本を非難する決議案をたびたび出している。その種の工作の持続性、粘り強さは今回の訴訟での軌跡がよく示している。日本側も米国という舞台でのこの種の争いの重要性を十二分に意識して、果敢に反撃すべきだろう。反撃すればそれなりの成果も得られる。今回の最高裁の判決はそんな教訓を与えてくれるようである。