天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

夕顔

2012-09-21 20:16:55 | 小説
澤部さんと初めて出会ったのは、去年の夏休みのことだった。俺はその時、どうしても欲しいものがあった。今、乗りまわしているマウンテンバイクだ。だから、夏休みにバイトを始めた。澤部さんとはそこのバイト先で知り合った。ホームセンターでの短期バイト。クロッカスの球根をネットに詰めるバイトだった。三人の組になって、球根に傷がないか調べる係、球根をネットに入れる係、球根の入ったネットを封する係に分かれて仕事をした。この三つの係をローテーションでやっていく。なぜか、俺と澤部さんは同じ組になることが多かった。バイトのシフトがほぼ同じだったのかもしれない。
何もない倉庫のような部屋に、机とイスと大量の球根が置いてあった。部屋を冷やしすぎると球根が悪くなるため、クーラーはなく、所々にある扇風機が熱いうだる空気をかき混ぜていた。いろんな人がいて、いろんなやり方で仕事をしていた。暑い暑いと文句を言いながら、仕事をするおばさん。険しい顔で無駄口を叩かず、作業するおじさん。手より口が動いている女の子。不機嫌にだるそうに、仕事をする若者。各々、自分のペースで仕事をしていた。

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