天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

地上三センチの浮遊

2013-10-04 20:52:31 | エッセイ
「瞳の色」

遠い遠い昔の話です。学生時代、イギリスに三週間ほどホームステイをしていました。その間、地元の英語学校に通っていました。そこには、色々な国の人が英語を学ぶために集まっていました。私がいた時期は、ヨーロッパの人が多かったです。滞在の最後のほうでは、日本の夏休みに重なったので、日本人が増えていました。

ほとんどそこでの授業の内容は忘れてしまったのですが、今でも強烈に覚えていることがあります。それは、「どんな異性のタイプが好みか」というのを英語で話し合うという授業があったのですが、そのテキストの中の「外見」の項目に「目の色」があったのです。私はそれを見た時、戸惑ったことを覚えています。その時まで、瞳の色を意識したことがなかったからです。日本で暮らしていると、瞳の色の選択肢は少ないことが多いし、瞳を見つめて相対することもあまりないので、瞳の色を重要視することはありませんでした。だから、その質問にはどんな目の色でもかまわないと答えたと思います。「どうして?」と聞かれたので、「日本人は黒い瞳が多いので、あんまり目の色のことを考えたことがない。」と答えた記憶があります。他のヨーロッパ圏の若い女性たちは、男性の目の色について熱く語っていました。グリーンが人気だったと思います。そのやりとりを目の当たりにして、そんな感覚があるんだ‼と新鮮な気持ちになりました。まったく違う文化、感覚に触れるというのは、本当にわくわくします。不思議でわからなくて、それでも新しい見方を教えてくれるからです。

そんな経験をしてから、海外のロマンス小説にある「鋭いグレーの瞳」「考え深げな黒い瞳」「輝くエメラルドグリーンの瞳」「鮮やかなブルーの瞳」なんていうのを読むたびに、にやにやしてしまう自分がいます。こういう外見の描写にどきどきして、より小説に入りこむんだろうなと思うと、楽しくなってくるのです。自分とは違う世界へのジャンプができる瞬間です。

みなさんは好きな瞳の色はありますか。それとも考えたことはないでしょうか。

ささいな好み、それが違う世界を開ける鍵になるのはおもしろいことだと思います。