天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

鳥はいつか飛び立つ

2017-11-26 18:47:54 | 
傷ついた鳥

羽から点々と
血を滴らせながら

うずくまっていた

羽ばたこうにも

痛くて

羽を広げることも
できずにいた

仲間たちともはぐれ

雪原の片隅で

血の花を咲かし

震えていた

抱き上げても

抗うこともできず

ただ

乾いた目を見開いていた

生命の蝋燭が
消えそうになっていた

けれど

鳥は

死の淵から蘇った

灰になる前に

自らを奮い起こした

羽の傷は

癒えていった

けれど

羽の傷は癒えても
心の傷は癒えない

鳥は恐怖と戦わなければ
ならなかった

羽ばたいても
羽ばたいても

脚を蹴り出すことができない

鳥は

頭を上げ

絶望の鳴き声をあげる

それでも

本能が飛びたいと

願うから

鳥は

羽ばたきをやめることは

できなかった

白い冬が過ぎ
桃の春が過ぎ

辺りが
翡翠色に染まる頃

鳥は

羽ばたきながら
羽ばたきながら

強く

脚を蹴り出した

低い滑走から

徐々に
徐々に

高みに昇る

鳥は

歓喜の鳴き声を残し

空高く

羽ばたいていった














Bird of Paradise

2017-11-22 17:11:59 | 
熱帯の島

強烈な太陽
生い茂る緑

ラブのためにだけ
鮮やかな色を纏い

ラブのためにだけ
鮮やかにステップを踏む

選ばれるために
選ばれるために

見るのはどちら?
見られるのはどちら?

華やかで
艶やかな

求愛のダンス

永遠に
飛び続けはしない

けれど

地上で
恋しいと身は震わせる

熱帯の島

繰り広げられる

恋の駆け引き

恋の勝者は
翼を広げ

恋の敗者は
尾羽を下げる






地上三センチの浮遊

2017-11-14 17:47:40 | エッセイ
『おうちのごはん』

行きつけのカフェでのお話しです。そこは週替わりのランチが、おうちのご飯の味なので好きです。プロの味じゃないところが、ほっこりします。違うおうちのご飯を食べているような気分になるのです。


ある日、おかずが「ポークチャップ」だったので、思わずフラフラとそれを注文しました。(おうちぽいおかずです。)

そして、出てきたのが、自分が想像してたのと違うので、びっくりしました。

がっかりではなくて、

「そうきたか!」

という新鮮な驚きでした。

自分のうちでは、ポークチャップといえば、トンカツ用の厚切り肉を使って作っていました。それは、男の子の多い家で、ボリューム重視だったせいかもしれません。

ただ、厚切り肉だったせいで、男の子たちはトンカツの方がいいと主張することが多かったです。トンカツVSポークチャップの戦い…。

話が逸れました。

だから、一人で暮らすようになってもポークチャップは、厚切り肉で作っていました。そういうものだと思っていたのです。

けれど、そのカフェで出たのは、薄切りの豚肉と野菜のケチャップの炒め物でした。

確かに、これもポークチャップ!

思い込みがぼろぼろとはがれた瞬間でした。

おうちのごはんは、家庭によっておのおの違うのでしょう。

人様のおうちごはんを、しょっちゅうご相伴に預かるわけではないので、そんな場面に出くわすと、ワクワクしてしまいます。


ホットミルク

2017-11-07 20:28:33 | ショート ショート


LINEを見たら真理ちゃんから、今日も遅くなる…との連絡。俺はだいたい定時に上がる職場なのだが、真理ちゃんのところは、そうではない。仕事がたてこめば、いくらでも遅くなってしまう。大変だ。真理ちゃんの体が、心配になるくらいだ。

お疲れさま。ご飯、用意してるよ。と返信したら、いつも、ありがとう。先に寝ててね。だって。どんなに、大変でも、疲れてても、真理ちゃんは、俺を気遣う。ごめんね、じゃなくて、ありがとう。て、真理ちゃんは言う。俺は、彼女のそんなとこが好きだ。

そして、寝ててねと言われたら、素直に寝ることにしている。真理ちゃんは俺に対しては、(その態度に、俺は彼女の中に入れてもらってると感じるのだが。)ストレートだ。待ってて欲しい時は、起きてて欲しいとちゃんと言ってくれるのだ。そこも、かわいらしいところだ。

真夜中。

俺は、目が覚めた。横に真理ちゃんはいない。起き上がり、キッチンに向かった。

真理ちゃんは、キッチンのダイニングテーブルに座っていた。

「おかえり。」
「ただいま。」

真理ちゃんは、電気がついたように笑う。疲れてるのに、俺を見ると、いつも、パッと笑う。

「お疲れさま。」
「うん。疲れた。でも」

真理ちゃんは、またニコッとする。

「ユウくんが、ハンバーグ作ってくれてたから、ちょっと元気でた。」
「ちょっとかあ。」
「ちょっとでも、すっごく大きいちょっとだよ。おいしかった。ありがとう。」

ニコッよりも大きな笑顔。真理ちゃんは、いつも優しい。そして、かわいい。頑張り屋さんだけど、頑張りすぎるところがたまに瑕。彼女をほぐすのが、俺の役目だ。

「まだ、寝ないの。」
「なんか、まだスイッチが入ってるのかな。眠くなんないのよ。」

「じゃあ、ほっとするホットミルクを。」

俺のしょうもないダジャレにあははと笑う真理ちゃん。しょうもないことを言うのも俺の役目。

沸騰させないように、ゆっくりゆっくりかき混ぜて。仕上げに、金色のハチミツをひとたらし。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」

真理ちゃんは、ふうふうしながら、ミルクを飲む。口に白いひげがつく。

「あったまる。うれしい。幸せだあ。」

真理ちゃんは、かわいい。小さなうれしいや幸せを俺に大きくして、返してくれる。俺も、思わず笑顔になる。

「よかった。」

真理ちゃんは、飲み終わったコップを置いて、俺に抱きつく。

「ユウくん、大好き。」

温められた頬。柔らかな髪。真理ちゃんの匂い。

真理ちゃんは、優しい。そして、かわいい。それから…


〈終〉