天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

地上三センチの浮遊

2016-07-24 19:25:25 | エッセイ
「夏の夜」

夏至が過ぎると、ゆっくりと夜が長くなっていきます。花火、夏祭り、盆踊り、ビアガーデン。大人も子供も、夏の夜は、浮き立ってしまいます。

今年の夏の夜は、熱帯夜があまりなく、過ごしやすい気がします。私の家では、窓を開け放てば、涼しい風が吹き渡ります。
窓を開ければ、いろんな音が聞こえてきます。夜の蝉、犬の遠吠え、汽笛の音、救急車のサイレン。動物の営み、人の営み。すべての生命は等しく夏の夜に、溶け込んでいます。

暇があれば、私は、夕暮れから夜にかけて、電気をつけずに過ごします。
だんだん暗くなり、視覚がぼんやりしてくると、耳や鼻が鋭敏になるのがわかります。
真向かいが公園なので、いろんな生き物達のざわめきが聞こえてきます。鬱蒼とした木々の濃い緑のにおいが漂ってきます。生き生きとした息吹を感じることができるのです。

夜の生命のハンモックに揺られるのが、私の夏の密かな楽しみなのです。


見えない手

2016-07-23 19:09:34 | 
よろけた体を
支えてくれた
見えない手

凍えた心を
温めてくれた
見えない手

倒れた体を
起こしてくれた
見えない手

破れた心を
縫ってくれた
見えない手

たくさんの
見えない手に
助けられて
世界はまわる

本当に尊いものは
目には見えない

忘れてしまいがちになるけれど

世界には

優しい目がおわします
善き魂がおわします

それを

忘れないように

それに

感謝して

そして

自分が

見えない手になれるように
















人はいくらでも歪むことができる

2016-07-23 18:48:56 | 
人はいくらでも歪むことができる

怯える犬を
虐めるなんて朝飯前

楽しむことだってできる

不快な女を
リンチするなんて朝飯前

正義の鉄槌と言えばいい

ナイフで全てを切り裂け

それから

ライフルで辺りを撃ちまくれ

むかつく
いらだつ

こわせ
つぶせ

そうすりゃ少しはましになる

敵は殲滅すればいい

子供だろうが老人だろうが
女だろうが男だろうが

そんなもんは関係ねえ

ぶっ潰せ
ぶっ潰せ

最後には
自分も消えりゃいい

人はいくらでも歪むことができる

殺さないでと懇願する者を
何の感情を交えないで
殺すことなんて朝飯前

埋められた死体さえ
冒涜するためだけに
あばくことだってできる

人はいくらでも歪むことができる
















ソフトクリーム

2016-07-20 14:15:36 | 
ふわふわやわい
ソフトクリーム

はやく食べなきゃ
溶けてしまう

ふわふわあまい
ソフトクリーム

はやく食べなきゃ
溶けてしまう

ふわふわ冷たい
ソフトクリーム

はやく食べなきゃ
溶けてしまう

君への気持ちも

はやく食べなきゃ
溶けてしまう

溶けてしまった
ソフトクリーム

手に負えない

溶けてしまった
君への気持ちは

ただの

白いベタベタした
残骸だ

おいしくないのに

心に
まとわりついて
離れない



境界線

2016-07-10 19:30:35 | 
親切が邪魔になる
善意が利用される

暴力は快楽で
快楽は暴利を貪る

倒れる無辜の人々

銃を構えるのは誰?

顔が見えない悪魔なんかじゃない

刃を突き刺すのは誰?

名前がない化物なんかじゃない

私と同じ

怒り喜び笑い泣く

過去があり
未来があるはずの

隣人ではないか

(それは命を奪われた人も同じ)

それなのに

何が

何を

分けるのだろう

血塗られたナイフを持ち
倒れた人を足蹴にする

この

高いようで
低い
境界線