天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

Sweetness

2017-07-26 09:06:28 | 

ハニームーンは長くは続かない

だから何?

そんなことどうでもいいわ

愛し合う2人に

ついばむ2人に

いらないお世話

あたしは

ハッピーチューンに身をゆだねる

見えない先を憂いて

見える今を曇らせたくない

だって

君と甘い口づけを交わせる今は

ここにあるのよ

君の胸の鼓動を聞けば

あたしの心に

色とりどりの金平糖が弾ける

フカクジツナ未来を恐れたりはしない

キミノイナイ未来に怯えたりはしない

だって

君と甘い言葉を交わせる今は

ここにあるのよ

君の吐息を感じれば

あたしの心は

星型のポップコーンが弾ける

あたしはここにいる
君はここにいる

それ以外のSweetnessが

どこにあるの?

熱帯

2017-07-23 20:49:24 | ショート ショート
熱がまだ冷めやらぬというように、彼は私を抱いている。

私は、彼の熱と汗に嫌悪していた。彼に背を向けて、横たわる。彼は私の首筋に唇をつけた。

私は、黙って目をつぶる。

彼の鼓動が正常に戻るまで。彼の気持ちが平静に戻るまで。

身じろぎもせず、やりすごす。

彼が悪いわけではない。

自分の心の隙間を、ただ彼の動きで埋めようとしたのだ。

本能が受け入れないことを、なぜ私は、無理矢理受け入れてしまったのだろう。

心の虚無を体の猛威で、なんとかしようと企てたのだが。

自分の自信のなさを、リトマス紙のように、彼で測ってみたからといって、何になるというのだろう。

魅力という魔法が、まだ使えるとわかったのは、新たな発見だった。

あまり、罪悪感は感じない。

私は、彼を試したが、彼は、私を抱いたのだから。

どっちもどっち。

同じ穴の狢だ。

彼の呼吸がゆったりとしてきた。

私はゆっくりと目を開ける。

天井のしみをぼんやりと見る。

彼がそっと、私の耳をはむ。

体は熱いのに、鳥肌がたつ。

虚しさばかりが、広がる。

夏の夜だ。



水晶の森

2017-07-18 21:29:33 | 
無色の静謐さ

氷と見紛うけれど

触れれば

触れた手の体温を返す

透き通る森

カッコウは鳴くだろうか

それとも

銀色の月の光を閉じ込めた森だから

フクロウが鳴くだろうか

それとも

ナイチンゲール?

大きな六角形の水晶のまわりで

ニンフたちが

白いドレスで踊るでしょう

反射する水晶の光

ミューズがハープを奏でれば

パーンが葦笛を吹くでしょう

羊の群れを率いる羊飼い

水晶の湖の縁で

羊を枕に眠るでしょう

その寝顔に恋するディアナ

祝福の小枝を羊飼いにかざせば

葡萄酒が彼の口に流れ込む

羊飼いは目覚め

ディアナと口づけを交わすでしょう








解き放たれていい

2017-07-15 19:07:41 | 
むかしむかしのお話

足が小さいのがいいと

小さい小さい靴に

足を詰め込まれていた

纏足の靴を見るたびに

胸が苦しくなる

あれでは

うまく歩けまい

不自然な美は

なくなっていくのだ

むかしむかしの話

腰は細いのがいいと

きつくきつく紐で

腰を締め付けられていた

コルセットを見るたびに

胸が苦しくなる

あれでは

ちゃんと息ができまい

不健康な美は

なくなっていくのだ

そう

当然のように
蔓延してても

それが

理不尽であるならば

NOと叫んでいいのだ

そぐわないものであるならば

捨ててしまっていいのだ

永遠なる掟などない

変わり続けて

私達はここに立つのだから

後ろを振り返ればいい

たくさんの屍の上にではあるが

モラルは更新されているではないか

諦めなくていい

私達は

解き放たれていいのだ












月夜の人魚

2017-07-14 19:33:15 | 


今宵は満月
真珠のような
しとやかな月

海は穏やかになぎ
月の光を浴びて
金糸のさざなみと
銀糸のさざなみが
ゆらゆらとたゆたう

さやかな月に誘われて
柔らかな波に誘われて

人魚が波間に見え隠れ
人魚が岩場に横座り

緑なす黒髪の人魚も
燃える赤毛の人魚も
輝く金髪の人魚も
まばゆい銀髪の人魚も

集い
さざめき
歌い出す

人魚が波間に見え隠れ
人魚が岩場に横座り

黒曜石のような瞳の人魚も
猫目石のような瞳の人魚も
瑪瑙のような瞳の人魚も
青玉のような瞳の人魚も

集い
さざめき
歌い出す

海原に船を漕ぎいだす人間は
人魚の歌は船を沈ませると

人魚を恐れ
人魚の歌を忌む

真実は違う

人魚の歌は
甘やかで
美しい

けれど

あまりにも寂しい

人魚たちの孤独のこもった
人魚たちの涙のこもった
歌だから

広い海を滑る船は
それを操る若者は

あまりにも寂しい

寂しい魂と魂は引きあって
孤独な魂と魂は引きあって

抱き合ってしまうもの
くちづけを交わしてしまうもの

若者が人魚の魂に触れたなら
人魚が若者の魂を慰めたなら

若者は海に抱かれるしかなく
船は海で眠るしかない