天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

こんにちはさようなら

2017-12-31 19:13:47 | 
こんにちはさようなら

今日はそんな日

過去と未来が交差する

今日はそんな日

今年が

うまくいったとしても
いかなかったとしても

来年が

よりよき世界になるように

思いをこめて

今年に

ありがとうを






シャネル N°5

2017-12-30 19:00:11 | ショート ショート
年をとった。鞠子は、鏡の中の自分に、あかんべをする。中身は変わらないのに、外見だけはメタモルフォーゼする。

年をとるのは、嫌なのか?と聞かれると、どうなのか、わからない。体は、衰える。美しさ(自分比であるが)は、衰える。無知という武器は、使えなくなる。けれど、「女性」としての無言の枷からは、楽になる。(女性にカウントされなくなるということなのだが、どうでもいい人に、女性とみなされなくても、構わない。)

では、人間として扱われるかというと、疑問だ。

「沼田鞠子」として、扱われるわけではない。

仕事場では、「長年勤務している、使い勝手がいい事務員」だろう。ま、自分自身も、それでいいと思っているので、不満はない。野心があるわけではないし、地味な手足がなければ、結局、組織は回らない。もちろん、肩書きや、見た目で侮られるのは、日常茶飯事。それを受け流すのも、毎度の事。塵芥のような扱いをする人間もいる。そんな時は、内心、「うわ〜。」と呆れることはある。同じ人間だとわかる程度の想像力さえ、持ち合わせない人間もいるのだ。あまりにも、浅くて狭い人間観に、笑いがこみあげてくるほどだ。腹が立つには、相手が稚拙すぎる。

目立たなくて、地味で真面目な仕事ぶりの鞠子は、「いてもいなくても、わからないけれど、いないと困る」らしい。

長年、働いていると、それなりの(地位ではなくて、居場所という意味で)ポジションを確立するのだろう。それは、自分の持ち味がわかってくるということだ。

鞠子は今、ホテルのパウダールームにいる。メイクを直す。と言っても、多少の手直し。チークを足して、口紅の色味を少し華やかにする。そして、シャネル N°5 をつける。若い頃は、恥ずかしくて、似合わなくてつけれなかったのに、今は、つけることができる香りになった。女性らしい香り。鞠子にとっては、なぜか、安らげる香りだ。

年をとるのは、悪いことばかりではない。

自分のために、小さな変身をする楽しみ。

自分にとっての、楽園を見つける楽しみ。

鞠子は、鏡の自分に微笑んだ。夜の扉を開ける儀式を終えて、鞠子は、パウダールームを出て行った。

静かな瞳

2017-12-25 19:11:17 | 
静まるリンク

手が上がる

曲が始まる

くるくると回り
くるくると跳ぶ

優雅でありながら
過酷な舞

滑らかに滑り
滑らかに刻む

微笑みながら泣き
泣きながら微笑み

高みへ
高みへ

それを目指して

飛び上がる

痛みや苦しみ

乗り越えるには

焦りや妬み

やり過ごすには

鳥の視点

揺るがぬ知性

有り余る情熱

どれが

欠けても

手に入らない

手が上がる

曲が終わる

轟くリンク

ウィナーは

頬を染める

けれど

瞳は静かなまま

遥かなる先を見つめている




海の見える街

2017-12-23 20:28:18 | 
海の見える街

そこには

いつも海がある

日常の海がある

空と呼応する海
光と呼応する海
季節と呼応する海

何かを運ぶ船が滑る
何かを採る船が滑る
何かを釣る船が滑る

生活の糧となる海

季節は冬
今日は晴

鈍色で銀色

冬であれば色彩が乏しい

けれど

晴であれば光を内包する

そんな冬の海の色

海の見える街

そこには

いつも海がある

普段の海がある



プライドなんぞ

2017-12-15 21:06:12 | 
高く高くそびえ立つ
プライドなんぞ
何になる?

人と自分を測る物差しに
成り果てた

プライドなんぞ
何になる!

プライドの奴隷になった

「選ばれた」人々は

「偉ぶった」態度で

傲慢の扇で

「下々」のものを打つ

浅薄な視野しか持たぬまま

愚鈍の知見をひけらかし

鼻息荒く

講釈を垂れる

裸の王様は

何百もの

揉み手と握手をする

無様に

そっくりかえりながら