天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

それでも

2017-06-24 21:12:41 | 
人間はいつか死ぬ

遅かれ早かれ

けれど

それは

生きることが無駄

ということではない

どれだけ

生きながえるかなんて

誰にもわかりはしない

ただ

生のろうそくが尽きるまで

人は死なない

生のろうそくが消えるとき

人は死にいたる

どんなにもがいても
どんなにあがいても

逃れられない

それでも

人は

生を基準に

生きていく

死を基準に

生きてはいけない

(死を考えることはできても
死ばかりを考えることはできない)

ある日

生よりも死が近くになるかもしれない

生よりも死が友達になるかもしれない

それでも

死が私に訪れるまで

私は生きていかなくてはならない







日々の泡

2017-06-18 21:13:33 | 
日々は過ぎる

当たり前のように

日々は過ぎる

心に浮かぶことは特になく
心に留まることは何もなく

駆け足で
飛ぶように

日々は過ぎる

大人になって

ルーティンのように

日々を過ごす

後ろを向けば

泡のよう

目に映る景色は

灰色のよう

心のシャッターは閉じたまま

目の前をせかせか歩く

瞬間

ツバメが旋回する

空を見上げれば

刹那

光で満ちていた

そう

世界は無色ではない

そう

時間は無限ではない

そんなわかりきったことさえ

忘れていた

日々は過ぎるのに

さらさらと
さらさらと

砂時計から零れていくのに

それから

目をそらしたまま

モノクロの迷路を

永遠に

さまよう気分でいるのだ














泡の向こうで

2017-06-12 20:28:34 | 
彼女は恋をするために生まれてきた

透明な海を離れ

ただ

恋をまっとうするために

シャンデリアきらめく
虚構の塔に足を踏み入れる

報われなくても
振り向かれなくても

いいと

吟遊詩人は

彼女の無辜な恋を

感動的に歌い上げる

何も知らない恋の相手

吟遊詩人は

彼女の自己犠牲ばかりを

高らかに歌い上げる

けれど

知らないことは

免罪符にならないのではないか

知らないふりかもしれないことは

不問に付して

吟遊詩人は

クライマックスに向かって

ハープをかき鳴らす

彼女は泡になった
彼女は泡になった

ということは

彼女はなかったことになった

ということだろうか

違うだろう

彼女は恋を生ききった

痛む足から抜け出して

自由になった

彼女は

泡の向こうで

微笑んでいることだろう

金色の光に包まれて









揺れる心に風が吹く

2017-06-11 19:56:04 | 
揺れる心に風が吹く

窓から風が通るように

清々しい思いが目を覚ます

揺らぐ心に風が吹く

風見鶏が風で回るように

惑う思いで千々に乱れる

風が

道を決めたり
道に迷ったり

させる

けれど

風は風

それ以上でも
それ以下でも

ない

揺れる心に風が吹く
揺らぐ心に風が吹く

それでも

風は風

宇宙のくしゃみでしかない




悲しみの向こうで鐘が鳴る

2017-06-02 20:23:52 | 
人は

なぜ

泥水を飲まなければならないのか

真っ白に
無垢に

天使の御子として

生まれ出ずるのに

なぜ

真っ黒とはいわないが

灰色のだんだらに染まってしまうのか

憎しみの炎に焼かれ
苦しみの轍に轢かれ

絶望があるだけまだまし

それは

希望の裏返しだから

虚無の蛇に飲み込まれた時

人は人であることを放棄する

ただ

空っぽの身体で

よろよろと徘徊する

そんな

虚ろな人々は

この世界に

億万と存在するのだ

慰撫は何もなく

闇の海底に沈んだ者たち

墓標は何もなく

無の砂漠に晒された者たち

最後に

空っぽの身体から

押し出された

弱々しい空気の漏れ

それだけが

その者の断末魔

それだけが

その者の生きた証