「そうだったの。何も知らずに、誘って、ごめんなさいね。でも、介護があるのに、こんなバイトをしてていいの。」
おばさんは、少し非難する口調だったが、澤部さんはあっけらかんと言葉を返す。
「今まで、ずっと母の介護ばかりしてて、煮詰まっちゃったんです。言葉は悪いですけど、気分転換したくなって。短期だし、いいかなと思ったんです。」
「どれくらい介護されてるの。」
「7年か、8年ぐらいでしょうか。」
「お母さん、まだ、お若いんじゃない。」
「そうでもないです。八十二歳になりますから。」
おばさんはびっくりした。
「え、失礼だけど、あなたの実のお母さんよね。」
「はい。私、遅くに出来た子供なんです。母が四十歳の時、生まれたんです。」
俺は内心、ひっくり返りそうになった。俺の母親と澤部さんは同じ年だった。信じられなかった。おばさんは感心したように言った。
「あなた、すごく若く見えるわ。うらやましい。ねえ、君もそう思うでしょ。」
いきなり俺に話を振ってきた。俺は返事のしようがなくて、困ってしまった。黙って首をかしげていたら、澤部さんが、軽く話を受け流した。
「彼にとっては私はおばさん以外の何ものでもないと思いますよ。」
しらけた空気が流れた。気まずい雰囲気だ。俺は食堂の時計を見て、ほっとした。おばさんは時計を見上げて、ため息をついた。
「もうすぐ昼休みが終わるわ。また、暑い中仕事しなきゃ。」
おばさんは、少し非難する口調だったが、澤部さんはあっけらかんと言葉を返す。
「今まで、ずっと母の介護ばかりしてて、煮詰まっちゃったんです。言葉は悪いですけど、気分転換したくなって。短期だし、いいかなと思ったんです。」
「どれくらい介護されてるの。」
「7年か、8年ぐらいでしょうか。」
「お母さん、まだ、お若いんじゃない。」
「そうでもないです。八十二歳になりますから。」
おばさんはびっくりした。
「え、失礼だけど、あなたの実のお母さんよね。」
「はい。私、遅くに出来た子供なんです。母が四十歳の時、生まれたんです。」
俺は内心、ひっくり返りそうになった。俺の母親と澤部さんは同じ年だった。信じられなかった。おばさんは感心したように言った。
「あなた、すごく若く見えるわ。うらやましい。ねえ、君もそう思うでしょ。」
いきなり俺に話を振ってきた。俺は返事のしようがなくて、困ってしまった。黙って首をかしげていたら、澤部さんが、軽く話を受け流した。
「彼にとっては私はおばさん以外の何ものでもないと思いますよ。」
しらけた空気が流れた。気まずい雰囲気だ。俺は食堂の時計を見て、ほっとした。おばさんは時計を見上げて、ため息をついた。
「もうすぐ昼休みが終わるわ。また、暑い中仕事しなきゃ。」