天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

地上三センチの浮遊

2016-06-24 19:56:15 | エッセイ
『恋の種』

齢を重ね、中年と呼ばれる年代です。この歳になってわかったこと。

「心の動き方は変わらない。」

そのスイッチは、環境や感性によって違うのでしょうが、喜怒哀楽は若い頃と同じようにわき出るものです。

人は、恋に落ちる時は落ちるのです。年齢や性別なんて関係なく。いろんなしがらみが人を縛りますが、おおらかな地平から見れば、それは健やかな心の動きだと私は思います。

好きな人の一挙手一投足に、必要以上に、振り回されるのも、好きな人の表情や言葉で、必要以上に、一喜一憂するのも、若い時と一緒です。(それを表に出すか出さないかは人それぞれですが。)

嫉妬に苦しみ、疑心暗鬼になり、眠れぬ夜をすごすのも、気持ちが浮かれ、胸が高鳴り、飛び跳ねたくなるのも、若い時と一緒です。(表現するかしないかは別として。)

それを醜いとか、みっともないとか、思われるかもしれません。

けれど、

自分だけは自分の心に恥じたくはないと思います。

恋の種は、自分が守らなければ。

そうでなければ、

せっかく芽吹いた恋の種があまりにも可哀想です。

白髪が混じり、ハリが失われてわかることもあるのです。

ぽろぽろ

2016-06-23 16:25:17 | 
梅雨の晴れ間

くっきりとした日差しが
首筋を焼く

風がざわざわと強く吹く
木立がさわさわと強くそよぐ

弱った心には

そんなぎらぎらした生命の焰が

痛くてしかたがない

カーテンを閉めて
薄暗い部屋のかたすみで
うずくまりたい

たちむかったつもりだった
たたかったつもりだった

けれど

窮鼠のひと齧りにもならなかった

徒労と絶望

ただ

惰性でよろよろとさまよっている

ねえ

「つもり」じゃだめだと
「けっか」をのこせと

したり顔で言ってくれたじゃない

ねえ

結局負け犬
結局虫ケラ

せせら笑いで言ってくれたじゃない

なんか

その時は

無感覚でいたけれど

その顔は

ボディブローで効いてくる

浅い夢に

繰り返し
繰り返し
出てきて

さいなむものだね

心が押しつぶされた時

人は

心のスイッチを切る

決定的に壊れてしまわないように

うつろな瞳
からっぽの意識

感情のひとかけらも
残っていないみたいだ

でも

人は

あまりにも健やかで
あまりにも強い

自分で自分を治そうとする
自分で自分に生きろと叫ぶ

だから

ある日

突然

目覚めたかのように

感情が決壊するのだ

ぽろぽろ
ぽろぽろ

涙がこぼれ落ち
止まらなくなるのだ

もし

それすらも

蔑むのであれば

人は

もう逃げ場はない

壊滅の崖に

真っ逆さまに

落ちてゆく














地上三センチの浮遊

2016-06-18 19:30:00 | エッセイ
『手放すということ』

桜を待ち望んでいたかと思うと、あっという間に散り、新緑の季節かと思うと、いつの間にか、濃いむせるような緑になっている…。

季節は、鮮やかに次のターンに移ってゆきます。後ろを振り返ることはありません。

人はというと、

自分が手にしたものを手放すのは簡単なことではありません。

多くのものを抱えていれば抱えているほど、

大事なものを抱えていればいるほど、

手放すのは難しいことです。

それは、物質的な「もの」も精神的な「もの」も同じです。

お金もクルマもバッグも地位も名誉も欲情も憤怒も憎悪もそして、「愛」と思いこんでいるものも。

すべてすべて。

きっと遠くから見れば、私たちは必要ないものを後生大事に抱えこんでいることでしょう。

そして、

「これを手放したら、破滅だ。」と思いこんでいるけれど、それはガラクタ同然のものだったりすることもあるのでしょう。

「執着」を捨てろとよく言われますが、

あまりにも凝り固まり、苦しみぬいていると、

なにが「執着」なのかがわからなくなってしまうのです。

「執着」を手放すことができるのは、自分だけなのですが、

「執着」を判断するのも自分だけなのです。

なんと、難しい選択を迫られることか!

手放すことは難しい。

けれど、

それに悩むこと自体が、人間らしいと言えるのかもしれません。








口付けを拾い集めて

2016-06-12 18:32:20 | 
口付けを拾い集めて
涙する

もう帰ってこない
恋の潮騒

手からこぼれ落ちた
恋の砂

それでも

あきらめきれず

繰り返し
繰り返し
取り出す

あなたのスクリーンショット

心は綻びたまま

恋の残骸をかき集める

あなたを憎むこともできない

心は空っぽのまま

恋の高揚を探し求める

口付けを拾い集めて
涙する

素足で
バスルームに立ち尽くす

夜更け






サファイアブルーの恋

2016-06-03 19:15:57 | 
静謐さから
それははじまった

あなたは
わたしを見た

わたしは
あなたを見た

その瞬間

二人は

恋の海の底に落ちた

その海は

陽気なアクアブルーではなく

深く
密かにきらめく

サファイアブルーの海

あなたは
わたしを抱きしめた

わたしは
あなたに口付けた

その心のうちは
情熱ではない

強くはあっても
衝動ではない

必然のもので
息をするようなもの

あなたとわたしは
同じ地平に立ち

手をつなぎながら
同じ世界を見る