天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

僕がいなくなったって

2019-08-29 18:52:24 | 
頑張って
頑張って

それでも

足りない

そんな

底知れない求めに

もう

応じることができなくて

自分に価値が見出せなくて

毎日が苦しくて

目の前が真っ暗で

死にたいとか

そういう言葉さえ

思い浮かばなくて

ただ

今が

少し先が

耐えられなくて

でも

逃げることが思い浮かばなくて

ただ

楽になりたかった

僕がいなくなったって

世界は変わらない

僕は代替可能な部品

僕が消えてしまったって

世界は回るだろう

そう思い

すべてを止めようとした瞬間

目の前を極彩色の蝶が

横切った

黄金の鱗粉が舞った瞬間

僕がいない世界を

僕は見せられたんだ

力になれなかったと責める

父親の姿

日に日にやせ細る

母親の姿

ショックを受けた顔をする

行きつけの食堂の店員さん

枯れてしまった

僕のカモミール

撫でる手を探す

毎朝撫でていた猫

小さな世界の
大きな悲しみ

そして

地球の裏側にさえ

僕の痕跡があったんだ!

僕が気まぐれに送った

真っ青なスニーカー

少年が履いて走っていた

彼の足には大きすぎて

ぶかぶかだったけど

世界は変わらない

僕は代替可能な部品

僕が消えてしまったって

世界は回るだろう

そう思っていたのに

僕は世界に組み込まれていて

僕は誰かに愛されていて

僕は何かの役に立っていて

僕は世界の重要なワンピース

一瞬の白昼夢

僕は

自分を守るために

今のゲームからは

降りることにした



悲しみや
悼みや
苦しみは

失った後についてくる

あの島まで

2019-08-24 19:02:47 | 
掌に収まる島

砂浜に立てば

いつも見える島だった

ある夏の日

私と君は

砂浜に立った

潮は白く泡立つ

空は青く際立つ

私は島を指差す

「あの島まで泳ぐ」

君は驚く

「君にできるのかい?」

私は頷く

そして

海に向かう

海は鏡のように見えた

けれど

海の中に入れば

波は渦巻き

小さな漣さえ

私を阻む

高い壁となった

心地よかった

波の音が

命をも奪う

セイレーンの

歌声に聞こえる

私は

心を静かに保ち

島との距離を見定め

足を掻き

抜き手を切る

君は

舟を漕ぎ

私を見守る

私の体は冷えていく

私の頭は冷えたまま

島の灯台

まだ

見失っていない

心拍が上がる

呼吸が浅くなる

落ち着け

海は

光と闇が混ざり合い

私を

惑わせる

私は

怖れを抱かぬように

君の櫓をこぐ音に

集中する

苦しい

と思った瞬間

君の声がした

「島だ!」

島の砂浜が白く光る

私は

慌てないよう

泳ぐことに

神経を注ぐ

ひと蹴り
ひと掻き

それが

永遠と思えた

それでも

足が砂地に

つく時がやってくるのだ

私は

島にたどり着き

砂浜に突っぷす

背中は

痛いほどの日差し

君の感嘆の声が

朧気に聞こえる

正義の刃をふるう?

2019-08-09 17:26:00 | 
声高に叫ぶ

正義を
モラルを

今の時代はなっとらん
今を生きる人間は屑ばかり

少しの瑕疵も許されない

こうできたはず
ああできたはず

後出しジャンケンは

絶対に勝てるだろう?

正義のヒーローが

多すぎて

モラルの道は大渋滞

鬱憤の溜まったヒーローたちは

魚の目鷹の目

1ミリ停止線越えた車に

正義の刃をふるうだろう

今宵のサンドバッグは

誰だろう?