天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

地上三センチの浮遊

2014-10-26 09:27:30 | エッセイ
「裏の裏の表の表」

『ジョゼと虎と魚たち』 田辺聖子

男と女とおいしいものが合わさった時がすべてだなと思わせる短編集。

田辺聖子さんの小説は難しくありません。悲哀や苦悩や不条理だって描かれてますが、
「まあまあよろしいやん。ぼちぼちいきましょ。」
というふところの深さがあります。そこが信頼できるところなのです。
上段から構えて、正論をぶつけることもありません。
眉間にしわ寄せて痛みや苦しみを咆哮することもありません。
「さもありなん…」
というゆるさ。
だからこそ際立つ真実や毒っけ。それから生きることの甘露があますことなく描かれています。

この短編集は、ちょっぴりスパイシーかもしれません。人の奥ひだのはんなりとした、やんわりとした、しっとりとした裏を知ることになると思います。
けれどそれを知ることは、しょっぱくて甘い、豆大福のおいしさに気付くことでもあるのです。

好きなものばかりなのですが、特に『恋の棺』『ジョゼと虎と魚たち』『雪の降るまで』は特にお気に入りです。
たおやかでいながら、手折られない強さとしなやかさを持った女性たちの裏の裏の表の表。それを怖いと思うか哀しいと思うか慈悲と思うか旨みと思うかは人それぞれだと思います。

地上三センチの浮遊

2014-10-01 19:17:14 | エッセイ
「一番近しい娯楽」

あなたにとって、一番の娯楽はなんでしょうか。テレビ、ネット、スポーツ観戦、映画鑑賞…。いろんなものが思い浮かびます。

私にとっての一番の娯楽は読書です。「一番楽しい」というよりも「一番近しい」と言ったほうが近いかもしれません。興奮したり、快楽が強かったり、楽しかったりするのは、違うものですから。

TVがなくても、ネットがなくてもそんなに辛くはありません。(不便ではありますが。)けれど、本がなければ辛くてたまらないと思います。私にとって本はこの世界とつながる唯一の鍵なのです。幼い頃、ひらがなを読めるようになってからずっと本は、私のかたわらにありました。あまり外界が得意ではない私にとって、逃げ場でもあります。(弱い私は何回もこの世界からドロップアウトしそうになります。本の世界に閉じこもることで、なんとか現実と折り合いをつけているのです。)

違う世界に行けること。違う世界があるということ。それを感覚として教えてくれる本をよすがに、リアルワールドを生きていく。

それが私の現実社会に立ち向かう処方せんなのです。