天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

ヒトリノヨル

2017-09-28 21:59:55 | 
秋は深まっていく
夜も深くなっていく

秋と夜は結びついて

月の雫となるのだろう
虫の声となるのだろう

寂しさと清々しさは

裏表

濃紺の夜空に浮かぶ

猫の目の月

公園の草むらに潜む

恋を奏でる虫

透き通ったガラスに

注ぐのは

透き通った孤独

それは

清々としていて

それでいて

ねじれている

それはそれで

おもしろし






自分を支えるのは自分しかいない

2017-09-12 19:42:02 | 
どんなに近しい人でも
その人の思惑があって

自分の思いが
届かないことがある

共感を望んでも

忠告が返ってくるかもしれない

それは

その人の

優しさなのだけれど

傷に塩を塗りこまれる

時がある

ただ

甘えたかっただけで

自分の弱さを

さらけ出す

情けない思いだけが

疲弊した心に

のしかかる

人は

自分だけで手一杯

愛している人に

寄りかかろうとするのは

止めよう

寂しいけど

悲しいけど

大人になるということは

そういうことなのだろう

痛い思いをするたびに

そう思うのに

同じことを繰り返してしまう

ため息をつき

目をつぶり

この言葉を

胸に刻む

自分を支えるのは自分しかいない














パールムーン

2017-09-11 20:12:59 | 

甘い快楽の風が吹く
優しい秋の長い夜

ふわふわ
ゆるゆる
ほろほろ

一人で歩く
ゆるやかな坂道

しなやかな足どり

誰も見ずとも

瑞々しい香気が流れている

秋の月は

しとどに濡れた
淡い雫を

地上にこぼす

アコヤガイの涙のような
儚い光を

天上に灯す

静かで長い
秋の夜

寝床を抜け出し

月の真珠で
首飾りを作る

今宵だけの
虹色の首飾り











アルテミスの嘆き

2017-09-10 08:59:20 | 
小夜更けて
ふわりふわりと
そぞろ歩く

夜空を見上げ
星座となった
かの人を思う

我はかの人を愛した
我はかの人を手にかけた
はかられたとはいえ
たばかられたとはいえ
我は愛する人を射抜いた

我は泣き叫んだ
生き返らせて欲しいと
冥府の神に頼んだ
父なる神に頼んだ
それは許されることはなかった
それがなされることはなかった

父なる神は
我をなぐさめるため
かの人を星座に変えた

我は慰められることはない
天上を見上げ
我の愚かさを思い知るのみ

我は月の女神
我は狩猟の女神

我は夜空にとどまり
我は森にひそむ

我は処女の女神であり
我は出産の女神である

汚れた娘を熊に変える
産む女を優しく守る

我は残酷な女神であり
我は豊穣の女神でもある

生贄を求めもするし
土地を肥やしもする

億光年の昔
我は愛しい人を手にかけた
その罪は消えることなく
その絶望は消えることなく
煌々と光っている

我は女神
たくさんの顔を持つ

そなたは我のどの顔と
見つめあうのであろう










黒く濡れる 白く乾く

2017-09-07 21:11:02 | 
動物として
生きるためにもがく
食うために生きる
すべての営みが
生死をわける
泥に沈みながらも
必死にもがく
我が身は黒く濡れていく
死に近しく生きている

人間として
生きるためにもがく
証しを探して生きる
すべての営みが
尊厳を求める
十字架にかけられながら
必死にもがく
我が身は白く乾いていく
生きながらにして死んでいく

野生の摂理
籠の束縛

どちらもむごく
どちらもつらい

それでも
二つは手をつなげない
深い深い溝がある

片方は片方を蔑み
片方は片方を贅沢だと思う

黒く濡れるのも
白く乾くのも

絶望としては等しい