天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

梅花香9

2019-02-24 12:53:26 | 小説
「かりんとう、深川名物かりんと

う。」

若かりし頃の清吉。その頃は夜、花街

で商売をしていた。特に、かりんとう

売りの口上のごとく、深川界隈を売り

歩くことが多かった。清吉はいきで気

風がよくて、あっさりした深川の土地

柄が好きだった。いつもだいたい同じ

ところをまわっていたので、顔なじみ

の客もできた。かりんとう売り名物の

大きなちょうちんに灯がともってい

る。月はさやかに輝いていた。そこか

しこの料理屋から煌々と明かりがも

れ、芸者たちの嬌声や客たちの笑い

声、三味線の音に長唄が流れてくる。

今は深川が一番活気のある時刻だ。清

吉のかきいれ時でもあった。清吉は声

をはりあげた。

「かりんとう、深川名物かりんと

う。」


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