まだ、桜は咲き始め。蕾が半分。開いたのが半分。これくらいを愛でるのが、ちょうどいいのか。固い美しさ。未来の担保がある。
麻耶は、ちょっぴり苦々しさを感じながら、ベランダから桜を見る。でも、これは、お門違いの感情だ。桜は季節になれば、咲く。種の導きに、従っているだけだ。それにいろんな感情を付随させるのは、人間なのだ。
つまんない人間になったもんだ。麻耶は自嘲しながら、ベランダを開ける。うらうらとした春の日差し。淡い空の色と淡い桜の色のグラデーション。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
麻耶は呟きながら、ベランダの前で胡座をかく。桜を見て、心がざわつくのは、ある意味、健やかなのかもしれない。桜は、短い間に、栄枯盛衰を見せる花だから。美しさに心奪われながら、散る時の胸の痛みを感じる花だから。
でも、桜は春になると再び咲くから。麻耶は、目を細めながら思う。今は、この桜を楽しもう。
春霞のような、薄濁りの酒を一口。するりと喉を通ってゆく。甘露、甘露。
昼下がりから、ゆるゆると飲む酒。まだ開ききらない桜を、眺める至福。
2人ではできなかったこと。1人になって、できたこと。
なんでも、いいこともあれば、悪いこともある。麻耶はうんと頷く。
訳が分からなくなって、苦しくなったり、自分を責めたり相手を責めたり。
もう、いいな。手放してしまおう。
麻耶は、強がりではなく、心からそう思った。
今の桜は、可愛らしい。満開になれば、艶やかになる。散り際は、その壮絶さに圧倒されるだろう。
その時その時を、楽しみ、受け入れればいいのだ。それを間近で見えるのは、ラッキーだ。
麻耶は、ふわふわとした気分で、また酒を飲む。開きかけの桜が、目に映った。
麻耶は、ちょっぴり苦々しさを感じながら、ベランダから桜を見る。でも、これは、お門違いの感情だ。桜は季節になれば、咲く。種の導きに、従っているだけだ。それにいろんな感情を付随させるのは、人間なのだ。
つまんない人間になったもんだ。麻耶は自嘲しながら、ベランダを開ける。うらうらとした春の日差し。淡い空の色と淡い桜の色のグラデーション。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
麻耶は呟きながら、ベランダの前で胡座をかく。桜を見て、心がざわつくのは、ある意味、健やかなのかもしれない。桜は、短い間に、栄枯盛衰を見せる花だから。美しさに心奪われながら、散る時の胸の痛みを感じる花だから。
でも、桜は春になると再び咲くから。麻耶は、目を細めながら思う。今は、この桜を楽しもう。
春霞のような、薄濁りの酒を一口。するりと喉を通ってゆく。甘露、甘露。
昼下がりから、ゆるゆると飲む酒。まだ開ききらない桜を、眺める至福。
2人ではできなかったこと。1人になって、できたこと。
なんでも、いいこともあれば、悪いこともある。麻耶はうんと頷く。
訳が分からなくなって、苦しくなったり、自分を責めたり相手を責めたり。
もう、いいな。手放してしまおう。
麻耶は、強がりではなく、心からそう思った。
今の桜は、可愛らしい。満開になれば、艶やかになる。散り際は、その壮絶さに圧倒されるだろう。
その時その時を、楽しみ、受け入れればいいのだ。それを間近で見えるのは、ラッキーだ。
麻耶は、ふわふわとした気分で、また酒を飲む。開きかけの桜が、目に映った。
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