まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

映画『パターソン』

2017年09月20日 | 日記

この映画について語るのはとても難しい。
そもそもストーリーがない。
ひとりの男の日常を淡々と描いているだけだ。
あまりの盛り上がりのなさに
途中でちょっと眠くなってしまったほどである。〈笑〉



ニュージャージー州パターソン市で暮らすバス運転手のパターソン。
決していい男ではなく口数も少なくネクラだ。
朝起きると妻のローラにキスをしてからバスを走らせる。
帰宅後は愛犬マービンと散歩へ行ってバーで1杯だけビールを飲む。
ただそれだけの暮しに過ぎない。

ただ一つ他の人間との違いがあるとすれば・・・
彼が「詩人」であることだ。
と言っても世間に認められた著名な詩人ではなく
ノートのきれっばしに自作の詩を綴っているだけの素人詩人だ。
単調な日々に見えるが
詩人の彼の目にはありふれた日常のすべてが美しく見える。
そんな彼が過ごす7日間が
ジム・ジャームッシュ監督ならではの絶妙な間と
飄々とした語り口で描かれている。

『パターソン』本予告 8/26(土)公開

パターソンにとって
周囲の人々との交流はかけがえのない時間だ。
幼馴染や酔っ払いやちょっと疲れたバーの親爺など
こちらもありふれた顔ぶればかりである。
しかし、パターソンはそんな連中との交流を心から愛している。
人生を豊かにするには日常の些事を愛さなければならない
と言ったのは確か芥川龍之介だったが
本当にそうだなあと思う。
詩人を目を借りるとつまらない日常が輝いて来る。

愛犬マービンがよかった。
散歩に出かける張り切りようも不貞腐れた表情も
じつに人間臭くて助演男優賞ものだった。

唯一の日本人俳優・永瀬正敏。
以前「ミステリー・トレイン」でもジャームッシュ監督と組んだが
作品のラストでパターソンと出会う日本人詩人役を演じた。
この人の存在感が光っていた。

あまり評判になっていないようだが
人生も悪くないなあ・・・
そう思わせる不思議な映画だった。