まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

死刑台のエレベーター

2017年08月02日 | 日記

フランス映画はどうも肌に合わない。
フランス語独特のあの軟弱な響きを聴いていると
全身ががむず痒くなって来てしまう。
映画ファンにはあるまじき偏見だが本当だから仕方がない。

そんな私のお気に入りのフランス映画が「死刑台のエレベーター」である。
名匠ルイ・マル監督のデビュー作だったと記憶する。
もう半世紀以上も前の古いモノクロ映画だが
いま思い出しても息づまるように鮮烈なサスペンス映画だった。
ストーリー自体はごくごく単純で
社長の妻である主人公が社員と愛し合うようになり
邪魔になった夫である社長を自殺に見せかけて殺害する話である。
主演はヌーベル・バーグの女神ジャンヌ・モロー。
理知的な横顔と低音のハスキーボイスが何とも魅力的だった。
二人が電話で愛を確かめ合う冒頭のシーンは
虫唾が走るはずのフランス語の会話が甘美に聴こえたものだった。



完全犯罪は成功したかに思えたが
現場を引き上げようとした恋人に思わぬハプニングが・・・
週末でビルの電源が切られてしまい
恋人は止まったエレベーターの中に閉じ込められてしまう。
いつまでも帰って来ない恋人の身を案じながら
パリの街をさまようジャンヌ・モロー。
バックにはマイルス・デイヴスが奏でるトランペットが
不安を煽るように静かに響きわたる。
単なる不倫映画をここまで完成度の高いサスペンスに仕上げるのは
ルイ・マル監督の並々なる手腕で
当時、まだ25歳だったと言うから驚くばかりである。



そのジャンヌ・モローが亡くなったと言う。
カトリーヌ・ドヌーヴ、ミレーヌ・ダルク、シモーヌ・シニョレなど
フランスには個性的な美人女優が多いが
中でもジャンヌ・モローは特異な存在だったのではないか。
トリュフォーなどヌーヴェル・バーグの監督たちに愛されたせいなのか
どこか内省的な美しさがあって「クセになる」女優だった。
晩年、リュック・ベッソン監督の「ニキータ」に出演していたが
実にカッコよくて女優としての年輪を感じた。

享年89歳の長寿に合掌。