平成27年12月18日(金)
火山防災に関する視察の最終日は、鹿児島市危機管理部での「桜島火山対策について」と、桜島ビジターセンターにて「ジオパークとして火山の生い立ち、住民の防災への取り組み等」について視察しました。
鹿児島市管理部では、国や京都大学火山活動研究センター等から提供された、常時見ることができる「桜島南岳」の火口モニター画像や地震計の観測データなど観測機器が設置された会議室において、2名の担当者から桜島火山対策についてスライドと資料を用いて説明を聞き、また質問させていただきました。
(説明いただいた鹿児島市危機管理部担当者。後ろには桜島の監視情報を表示)
(訪問団との意見交換)
(ご提供いただいた資料)
桜島の概要説明では、島内環境のほか、火山活動の推移、噴火災害史、今後の噴火活動予測、火山活動における広範囲な被害となる火山灰の拡散による降灰被害について、火山活動を原因とする大地震津波予測、長期にわたる避難対策等について説明がありました。
(桜島の大噴火の状況)
(長期避難への備え)
防災対策では、災害対策組織について、桜島火山ハザードマップの活用方法、噴火警戒レベルと防災対策について、避難施設、桜島火山爆発対策総合防災訓練、避難計画概要、島外避難、災害協定などの説明を聞きました。
(ハザードマップを使って火山防災対策が説明された)
桜島の観測体制では、大規模噴火の前兆現象を的確に捉え住民避難につなげること。観測体制では、観測機器、観測坑道、伸縮計データの解析、防災関係機関と観測機関の連携について説明がありました。
桜島の降灰対策では、これまでの噴火や市街地における降灰状況、鹿児島市が取り組む桜島火山対策事業と予算概要、道路や宅地、学校等における降灰除去への取り組み。気象庁が発する量的降灰予報について。農業被害や風評被害とその対策について。火山灰特有の土砂災害等に対する砂防・治山事業について。今後の防災対策の方向性について説明を受けました。
最後にこれまでの防災対策の課題では、桜島内の避難計画があっても、鹿児島市内の市街地避難計画ができていない。避難区域が拡大した場合や避難が長期化した場合の「生活を支えるための戦略」がないなどの見直し。国・県・周辺市町村を巻き込んだ「桜島大規模噴火対策」の取り組みがこれから始まる等の説明がありました。
この他、本年8月15日に桜島の噴火警戒レベルが4まで上がった背景について、関係機関の連携と判断、避難情報の発信、住民避難と帰宅、避難場所での避難者説明会、避難住民の要望聞き取りとその対策、広報活動等について報告がありました。またそれに関連し、道路・公共交通機関等の状況、観光施設等の状況、イベントへの影響、国・県等の連絡要員配置状況についても報告がありました。
こちらからの質問では、「活火山として常に噴火災害が発生または発生してきた環境における、行政や住民の防災意識への経験の生かし方と課題について」また「防災教育」についてでは、「大正の大噴火以来大きな災害は発生しておらず、行政も住民も「未経験者」がほとんど。大噴火時の避難対策はしっかり取り組まねばならない。時々発生する火山灰の降灰ではマスコミが発信するほど市民生活が混乱している状況ではない。災害には冷静に対処する必要がある。防災訓練には地元にある京都大学火山活動研究センター関係者が住民に講話をする機会もある。防災教育では、市が作成した副読本やマンガなどでわかりやすく伝えている。」とのことでした。
参考にいただいた「桜島の火山防災ガイド」は大変わかりやすく書かれた副読本としても活用できる資料でした。
市が実施する降灰対策事業については、「国・県の補助金やその他支援制度の仕組みについて、また課題として降灰量に応じた支援制度もあるが、現場の状況に的確に対応しているともいえない。見直しを期待したい。」というものでした。
先進地の課題は、これから火山噴火防災対策を構築していく立場では同じ課題を抱えることにもなりますので、大変参考になりました。
そのほか、避難時おいて離ればなれになることも前提とした家族情報を管理する「避難用家族カード」の効果についても、確認させていただきました。
(好評だった「避難用家族カード」。3枚複写式となっている)
(訪問団と記念撮影)
最後の視察地は、桜島内にある「桜島ビジターセンター」で、日本ジオパークに登録されている地質学分野と観光面、災害対策に取り組む現状を視察しました。施設内ではジオラマや映像などを説明員から聞き、特に災害面では大正の大噴火時の映像や教訓などが具体的に残されているものもあり、大災害の悲惨さを目の当たりにしました。現在桜島は、北岳が活動を停止しており山腹が至るところで崩壊が進みつつあり、大規模な砂防対策が行われています。一方、噴火が活発なのは南岳で、遠方より国や研究機関のモニターカメラで24時間監視が行われています。また、地震計も設置され、火山噴火に結びつく山体の変化を常時監視しています。
(桜島の全景。移動中のフェリーから撮影)
(桜島ビジターセンターの入り口)
(説明いただいたビジターセンター職員)
(大正の大噴火の教訓を記した記念碑)
(桜島の由来)
(桜島北岳は休止中。山腹崩壊が進み砂防対策が講じられている)
(南岳は活発に活動中。様々な監視機器が常時作動中)
(大正の大噴火の火山灰に埋まった鳥居。降灰は2m以上と言われる。)
火山はその雄姿や温泉等で多くの人に魅力を与えてくれる一方で、大きな災害を起こす現場でもあります。生活者はもちろんのこと、観光等で地域経済を支えている面も大きく、十分な災害対策と適切な情報の発信により、自然とうまくつきあうことができます。今回の視察で「風評被害」が多く聞かれました。正しい情報発信はそこに関わる行政や住民の責任でもあります。今後の火山噴火防災対策に関わる立場として、今回各地でいただいた貴重な情報をしっかりとふまえ、生かしていきたいと思います。
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