鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

有珠山火山噴火対策視察

2017年09月22日 | 議会活動

平成29年9月22日(金)

 

 昨日の航空機遅延による視察中止を取り戻す意味も含め、札幌から片道約2時間の行程を経て、有珠山火山噴火災害対策の治山事業を視察させていただきました。

 視察場所は、有珠山の南側、伊達市の大平地区と、北側の洞爺湖町で、それぞれ北海道庁の担当者に同行いただき、現場での詳細な説明を受けました。

 今回の視察の目的は、静岡県も富士山に対する火山噴火災害対策を進めるにあたり、先進事例として現地を訪れたものです。

(休憩で立ち寄った昭和新山。有珠山の東側に位置する)

 

 有珠山は、日本でも比較的噴火周期の短い活火山の一つで、噴火の度に周辺地域に甚大な被害を与えてきました。北海道は、昭和52年と平成12年の噴火を受け、噴火災害対策を実施しています。厳密に言えば、中腹から山頂における国有林地帯は国が対策を講じ、それ以下の民有林を道が治山事業として実施しています。

 

 有珠山は大有珠、小有珠、西山、金比羅山などの寄生火山により山体が形成され、自然の恵みである森林や温泉、洞爺湖など観光資源が豊で、支笏洞爺国立公園の一部となっています。平成20年7月には、「北海道洞爺湖サミット」が開催され、世界から大きく注目を集めました。この地がサミット開催地に選ばれた大きな理由は、「環境サミット」と称したことで、国立公園内での開催が決まったと言うことでした。

 

 有珠山の噴火は、記録に残っているだけでも、1663年の噴火から8回あり、20世紀以降だけでも4回の記録があります。これらの記録から、噴火周期は概ね、30年から50年と推察されています。

 直近の噴火は平成12年の噴火で、幸いにも人的被害は無かったものの、噴石・降灰による家屋の倒壊や破損、地殻変動による道路や鉄道の亀裂、湾曲などライフラインに大きな影響を与えました。

 復旧・復興は、北側の洞爺湖温泉については国の支援が受けられたものの、伊達市側はその支援が受けられず、ライフラインの復活までに相当の時間がかかったということでした。この事態について、本県の場合も、いろいろなケースを想定しておく必要がありそうです。

 

 有珠山南側の大平地区では、道が実施した、災害関連緊急治山、林地荒廃防止施設災害事業、火山地域防災機能強化、小規模治山の実施状況の説明と、一部の事業実施現場を視察しました。民有林の施行部分について、昭和52年度から昭和56年度の事業実施では81億円余が、平成12年度から平成17年度の事業実績では、37億円余が投入されています。

 施工内容は、大崩壊地からの流出土砂で形成された扇状地に、土留工をいくつも分散して設置し安定化に努めています。噴火後の降雨による泥流が既設の土留工を乗り越える事もあり、その受け皿として下流域に遊砂地も設置されています。

 また、平成12年の噴火時には、巨石等の崩落も確認されたことから、土石流内の巨石を補足し、減勢化させる事を目的とした、鋼製のスリットダムも設置されています。

(噴火対策事業を説明する看板)


(説明いただいた北海道庁の職員)


(林の向こう側には有珠山の頂上が見える)

 

(土石流等を防ぐ施設の前で)


(金属製の箱の中に土砂を入れ、補強された堤)

 

 これらの施工例は、富士山の大沢崩れに対する国の富士砂防事務所が取り組んでいる内容にも似ています。しかし、本県が担うべき対策についてはまだ十分に把握されていないと感じています。本県にとっては、どこにどのような対策を講じるべきか、予算確保のためにも計画的な取り組みが必要と感じました。

 

 洞爺湖温泉の視察では、平成12年の噴火口が温泉地の間近に迫り、大きな災害の爪痕として被災した建物などの災害遺構、被害を最小限にくい止めるための土石流等を導く導流堤や砂防堰堤など、火山噴火や洞爺湖周辺の自然を伝える火山科学館などを道の担当者の案内で説明を聞かせていただきました。周辺の対策費は、250億円を超えたといいます。

 本県では、富士山の火口がどこに出現するか分からないと言われていますが、様々な科学的な知見、あるいは予測等に基づき、今後の対応が望まれます。特に富士山の東側は過去の災害の経緯もあり、私自身の住む南西側もその可能性が無いとは言えず、今後の本県の火山噴火対策に注視していきたいと思います。

(平成12年の噴火による被災状況や、その後の対策を説明する道職員)


(正面に見える集合住宅の向こう側に噴火口が出現した)


(火山科学センター)

 

 私は富士市議会議員であった平成13年に洞爺湖温泉の現場を視察した事があります。当時は、膨大な降灰に埋没し、噴石で破壊された建物がいたるところに残っていて、自然の驚異を感じざるを得ませんでした。しかし、被災から15年を経過し、復興と噴火対策が終了した現状には、当時の面影では災害遺構として残っているものを除けばありません。

 

 今回の視察は、本県の火山噴火対策に大いに参考となる内容で、改めて、この視察の経験を元に、富士山を具体的な噴火対象として考えていきたいと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 思いがけない出会い | トップ | 彼岸の中日あれこれ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

議会活動」カテゴリの最新記事