常識について思うこと

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大量犯罪者時代への分岐

2009年01月21日 | 産業

ファイル共有サービス等を通じて、他者の著作物を配信するような行為は違法でしたが、昨年末、それらを入手する行為までが違法であるということで、法的整備がなされるという報道がありました。

実際に、インターネットの流通に合った著作権管理ができない以上、そうした対策がとられるということは、やむを得ないことだと考えます。しかし、そうした方策は、あくまでも次善策に過ぎず、本質的な問題は、インターネット時代に適合した著作権管理システムがないことにあります。

一時期、ファイル交換ソフトによる著作権侵害が問題になっていましたが、そもそも最近では、ファイル交換ソフト等という回りくどい手法に頼らず、堂々とウェブサイトに様々な著作物が貼り付けられているというのが現状です。とくに海外のウェブサイトでは、日本で放送されているアニメ等が、ほぼ半日以下のタイムラグで、ネット上で自由に視聴できるようになっているのです。こうなってくると、もはやファイル交換ソフトによって、著作物を入手することの規制すら、意味を成さなくなってきます。

現在のように、著作物を入手せずとも、簡単に視聴できる環境が整ってしまっているのであれば、ユーザーにとって、著作物をいちいちダウンロードして入手することの方が厄介です。つまり、法的に規制が厳しくなったから、ダウンロードをしなくなるということよりも、利便性の観点から、著作物をダウンロードして入手するという行為の必要性が、今後、ますます低下していくだろうということです。

現状の枠組みの中では、こうした規制の方向性こそが、限界なのだと考えざるを得ないのかもしれませんし、これを素直に受け入れることも重要なのだろうと思います。しかし、これで「対策を打った」等と威張られても困ります。

今日のインターネットを巡る、上記のような状況を鑑みず、今更になって、違法ファイルの入手を取り締まる対象にするというのは、対応として鈍いと言うことができます。また、あまり事の本質を理解していない方々が、この問題を取り仕切られているのではないかという批判があったとしても、それを免れることはできないとも思います。つまり、それくらい問題の根本的な解決には、程遠い状態ではないかと思うのです。

もし規制の方向性を崩さないというのであれば、本当に時代の流れに合わせて、きちんと規制をかけるとすると、著作物の入手に留まらず、著作物の視聴にまで、規制の範囲を広げなければなりません。つまり、ブラウザーを通じて、違法著作物を見たら、それを取り締まるということです。それは、現状においては、「過度な取り締まり」に映ることであっても、時代の流れが、大きくそう動いている以上、いずれそうした「過度な取り締まり」まで踏み込まなければならないと考えておく必要があるということです。

しかし現実問題として、これを実行レベルで進めていくことは、ほぼ不可能です。もちろん、著作権や国政責任者を含む諸々の関係者の方々が、そうした取り締まりを行う方向で、各調整をされることは自由です。しかし、それは大変な問題を引き起こします。10年前ならいざ知らず、これだけ広く普及したインターネットのユーザーが、違法なサイトを閲覧したというだけで、取り締まりの対象になるとしたら、極めて大多数の人々が、その対象に加えられると考えなければなりません。

こうなると、インターネット社会は、ほとんどの人々が法を犯す人々ということになり、文字通り「大量犯罪者時代」へと突入していくことになります。こうした「大量犯罪者時代」への分岐点が、刻々と迫りくるなか、本問題の根本的な解決策が求められているのです。

ここでの問題のポイントは、時流を読めるかということだと考えます。つまり、現状のようにインターネットのようなオープンシステムが急速に広がっていくことは、間違いなく時代の流れであり、これを縛りつけたり、押さえつけたりすることは不可能であるということが読めるかということです。

規制というのは、あくまでも流れを押さえ込む手法でしかなく、それが通じるのは、その流れが時代の流れと呼べるほど、大きなものでない場合に限ります。流れが肥大化し、けっして押さえ込む込むことができない、時流というとてつもなく大きな相手に成長したとき、規制は、逆に規制をかけようとした人々の首を絞めにかかります。

もちろん、時流を時流と読めずに、力ずくでも、押さえ込もうとする人がいても良いでしょう。考え方は自由ですし、それを強引に変えるとはできません。

ただ、そういう方々に申し上げておきたいことは、そうした行為には大きな代償を伴うことになるだろうということです。この転換期の時代にあって、こうした問題の関係者のなかには、「重大なプロジェクトをやっている」、「すごいメンバーで取り組んでいる」等という顔で、その気になっている方々もいらっしゃるかもしれませんが、問題解決という意味では、役不足の方々もいるように思われます(逆に「問題解決が非常に難しい」ということを証明するための役割は、果たしているかもしれません)。

いずれにせよ、そうした方々には、なるべく早く、その時流の大きさに気付き、下手なしっぺ返しを食らわないような方向転換をされることを祈ります。

そして私自身、誰もこの時流をポジティブに活かす方策を生み出せないようであれば、そうした事態に備えて、淡々と準備を進めておこうと思います。

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